研究課題/領域番号 |
24520792
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道開拓記念館 |
研究代表者 |
山田 伸一 北海道開拓記念館, 学芸部, 学芸員 (30291909)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近現代史 / 先住民族 / 土地問題 / 北海道開拓 |
研究概要 |
研究計画の初年なので、既往の研究状況の整理と、史料の所在状況の把握に力点を置いた。具体的には主に以下のとおり。 1)北海道立文書館所蔵の開拓使文書を継続的に調査し、「北海道地券発行条例」その他開拓使期の土地制度の制定過程とその施行に関する史料の所在状況を調査し、既往の研究が使用している史料内容との照合など、分析を一部について進めた。これらと並行して、以前に史料を収集した開拓使・三県期における十勝アイヌ民族共有財産の発生・管理について、補足史料の収集とそれらの分析を行い、論考にまとめた。 2)同館所蔵の札幌県庁文書のうち、山林関係の文書を調査し、当該期の山林払下げなどがどのような制度の下で行われていたか、アイヌ民族の山林利用がどのような制度的な制約の下に置かれていたのかを考察するための素材収集を行った。 3)北海道庁文書および地図資料を調査して、胆振地方の白老町を対象として、「北海道旧土人保護法」による土地下付事例を収集・整理し、現地調査を実施した。同町における各戸に対する土地下付は、同法制定後早い時期に海岸沿いに小面積で、その数年後に内陸の傾斜地(山がちな土地ないしは山)に大面積でなされていたことを把握した。 4)市立函館中央図書館、北海道立図書館、福島県立歴史資料館、福島県立図書館などにおいて、紀行文や新聞記事など関連史料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開拓使文書の調査は、予定よりはやや遅れ気味であるが、進捗させることができている。「北海道地券発行条例」の制定過程については、既往研究の使用史料との照合を進め、今後の分析の基礎となる作業を行うことができた。 本研究課題は直接には土地の利用や所有を研究対象とするが、土地所有・利用がアイヌ民族にとって問題となるのは、土地そのものだけではなく、土地に言わば「付随」する山林や鳥獣などの利用である。その観点から、山林関係の公文書が比較的まとまって残されている札幌県庁文書の調査を実施したことで、次年度以降の研究を展開するうえで、有効な準備をすることができた。 特定地域を対象とした事例調査としては、当初計画では初年度には日高地方を考えていたが、史料の所在状況その他の事情から白老を対象として調査をすることで、これまでの「北海道旧土人保護法」による土地下付についての研究では、実証的な研究が未蓄積だった胆振地方の事例について理解を深め、また、今後の研究展開の足がかりを得ることができた。 また、従来史料を収集していながらまとめることができていなかった開拓使・三県期の十勝アイヌ共有財産の発生・管理の歴史について、本研究課題のなかで補足調査を行うことで、成果を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、北海道立文書館所蔵の開拓使文書および三県期の文書(札幌県庁文書ほか)の調査を進め、「北海道地券発行条例」など当該期の土地制度におけるアイヌ民族の扱いについて、また、その施行実態におけるアイヌ民族の取扱いについての研究を行う。 北海道立図書館、国立国会図書館、国立公文書館、市立函館中央図書館などにおいて、明治期の紀行や拓殖事業の実施に関わる調査記録(河野常吉資料ほか)、新聞・雑誌類などの調査を実施し、当時の北海道移住、アイヌ民族の土地所有などに関する史料を収集する。 前年度に引き続き、胆振地方を対象に「北海道旧土人保護法」による土地下付事例の整理と位置の同定を行い、現地調査を実施して、その特徴や前提となった事情について考察を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
明治期を中心とする土地所有制度や天然資源利用についての研究、および北海道への移住者や旅行者の記録に関する書籍類を、また、複写などによって収集した史料の整理・保存をするためにファイル類などを購入するため物品費を支出する。 東京など道外および函館など道外所在の機関における史料調査、胆振地方などにおける現地調査などのために旅費を支出する。 文献や新聞・雑誌記事などを複写によって収集するためなどのため、その他経費を支出する。
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