1899年に制定された「北海道旧土人保護法」による農耕目的の土地下付が、それ以前のアイヌ民族による土地所有と利用とどう関係したかを検討し、以下のような諸点を明らかにした。 (1)開拓使根室支庁管内では、アイヌ民族の家屋所在地の所有が認められていない事例が多くあった。(2)開拓使と札幌県は、十勝アイヌの共有財産(漁場ほか)を管理し、広業商会への融資財源とした。財産管理からのアイヌ民族の排除は、「北海道旧土人保護法」下の政策態度と共通するものである。(3)1899年以前にアイヌ民族の農業用地として確保されていた官有地のなかには、「北海道旧土人保護法」により下付されなかったものもあった。
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