研究課題/領域番号 |
24520795
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小林 聡 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40234819)
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研究分担者 |
川本 芳昭 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (20136401)
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キーワード | 服飾制度 / 中国 / 出土文物 |
研究概要 |
本研究は、4~6世紀前後における東アジア世界の出土文物において表現されている服装など、文化や生活にかかわる諸要素を分析することによって、この時期の民族移動や文化融合の実態を明らかにすることである。この内容に沿って、平成25年度は、出土文物などの画像ファイルを増やすことにつとめた。以前の科研費(平成20~22年度)では中国本土の出土文物の収集作業をメインとし、補足的に高句麗壁画など中国周辺諸国の文物をデジタル画像化していたが、本年度は引き続き、図録類(特に新たに出版されたもの)や中国での出土文物の実見などのデータ集積につとめた。 ①中国各地の新たな出土文物のデータについて、『文物』・『考古』・『考古学報』などの雑誌類や新たに出版された発掘報告書や図録に載せられた文物画像のスキャンを行った。 ②本年度は学内行政に追われ、中国の博物館を訪問する時間を作ることが困難であったが、私費にて渡航した際に、いくつかの博物館を訪問することができた。一つは福建省博物館であり、ここでは南朝時期の画像磚を数点撮影を行うことができた。また、学内行事の一環として西安を訪問した際に、陝西省博物館・西安博物院・大唐西市博物館・碑林博物館を訪問して出土文物を実見することができた。 ③デジタル化した資料を作成された時代、出土地点などを基準に整理した。本科研で収集したもの以外も含めて、作成したデジタル画像は現在まで8700余に達した。地域的にも、古墳時代の日本列島から中央アジアまでの主要文物の相当部分を網羅するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題は、4~6世紀前後における東アジア世界の出土文物において表現されている服装・住居・食物・楽器など、文化や生活にかかわる諸要素を分析し、当時の社会を見通すことであるが、平成24年度は視野をやや広げて、中央アジアのソグド人遺跡や遊牧地帯の突厥遺跡まで拡大したが、中国の領域内でも仏教石窟に描かれた服飾画像が不十分であったので、敦煌莫高窟や麦積山など甘粛方面の画像を収集しようとした。全てをスキャンすることはできなかったが、北朝隋唐間の甘粛方面の服飾画像データをかなり充実させることができた。 以上のことから、当初予定していた目標のおおよそは達成できたと考える
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今後の研究の推進方策 |
研究目的に沿って、今後は、さらに出土文物のデジタル画像化を進めていきたい。中国本土の出土文物は今後も増えていくことが予想されるので、この方面のデータ集積を続行する。本年度は、まず潼関税村隋墓の詳細な報告書や、民族混淆地帯である唐代営州(現朝陽)の出土文物の整理を行い、収集データ上が不十分な時代や地域をなるべく少なくしていきたい。さらに、昨年度に引き続き、中央アジアや北方遊牧民の服飾資料(デジタル画像化したもの)等の収集にも力を入れたい。新疆地区の古墓からは現物の服飾が出土しており、これが唐代の服飾の起源の一つと考える研究者もいるので、この方面のデータ集積を行いたい。以上のような作業を通して、4~6世紀とそれに前後する時代の、服飾等の流れを把握できる状況にしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末にいたり、研究に使用する資料類(古墓発掘調査報告書や図録類など)が出版されたが、これらを購入するには残額がやや足りなくなったため、平成25年度は使用せず、次年度に使用したいと考えた。 古墓発掘調査報告書や図録類など、東アジア服飾史・礼制史に関係のある書物を購入する。
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