本年度の研究計画は、収集した史料の分析により、(1)英国植民統治体制におけるビルマ人地方官吏の位置づけを制度的に明らかにすること、(2)地方官吏が、植民統治体制とどのような関係にあったのか、事例研究により考察すること、(3)国際ビルマ研究集会(International Burma Studies Conference 2014)に参加し、英領ビルマにおける現地人官吏の歴史的位置づけについて、本研究で得た成果を報告することであった。 (1)に関連して、2014年12月、史料調査・収集(ミャンマー国立公文書館)をおこなった。19世紀末、ビルマ南部の管区・県役所において作成された文書を中心に、この時期に実施された地方統治改革について調べた。それまでのサークル(circle)と呼ばれる統治・徴税単位が廃止され、より小規模なヴィレッヂ(village)を単位とする、ヴィレッヂ・システムが導入される経緯、ならびにサークルやヴィレッヂの統治を委ねられていたビルマ人官吏の動向を考察した。 (2)(3)に関連して、2014年8月、シンガポールで開催された国際ビルマ研究集会に参加し、「19世紀後半におけるビルマ人下級官吏の要求:内容、様式、植民統治行政にたいする意味」という題目で研究発表をおこなった。19世紀末、ビルマ南部において、サークル・レベルの地方官吏が、所属する県の知事にあてて提出した、諸種の申立(petition)の文書に着目し、それら文書から得た知見を報告した。昇進や昇給、異動などについての要求をさかんにおこなっていたことから、地方官吏たちが、植民統治体制の末端に位置しながらも、同時にその体制(上位の植民地権力)から利益をひきだそうと実利的に行動していたのではないかという点を指摘した。
|