平成26年度の前半は、平成25年度に行った二度の海外調査(1月上旬トルコ、3月下旬トルコ)の成果の一部をまず、平成26年度5月の日本中東学会第30回年次大会において発表した。題名は「近代オスマン帝国における「女性」雑誌と出版文化」であり、ここでは主に1860年代以降に女子中等教育の普及にともない、女性の識字率の向上が認められた都市部を中心に発行された複数の「女性」雑誌の内容を検討し、その目的と購読者層から見る社会への影響を論じた。これらの雑誌には、それぞれ個性があり、各雑誌の発刊の目的や購読者層は重なる部分もある一方で異なる要素も見受けられた。とりわけ「婦人専門新聞」は著名な執筆者のみから紙面が構成されていたわけではなく、地方も含めた幅広い地域の女性読者たちの投稿によって成立していた特色が認められた。彼女たちはこの新聞を通じ、情報交換し、個々にネットワークを築いており、これらの行動は20世紀初頭の第二次立憲制期の女性の社会進出や積極的な社会活動に繋がるのではないかと問いかけた。夏期にはこの学会発表の内容と研究初年度から継続している近世から近代への移行期のオスマン社会の変容と知識人層との関わりについて、論文を執筆し始めた。後者については、「近世オスマン帝国におけるウラマーとその家系形成」として平成27年4月に印刷される予定(東京外国語大学アジア・アフリカ文化研究所編『近世イスラーム国家史研究の現在』に収録)である。 平成26年度の後半は、夏期から執筆している二本の論文の内容に即して予備調査を行った。平成27年の1月と2月にトルコのイスタンブルとアンカラの文書館で約2週間ほどの資料調査を行い、その成果を執筆中の論文に加えることが可能となった。
|