研究課題/領域番号 |
24520798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 貴保 新潟大学, 研究推進機構超域学術院, 准教授 (40403026)
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研究分担者 |
荒川 慎太郎 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (10361734)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 西夏 / ロシア / モンゴル / カラホト / 仏教 / 国境防衛 / 出土文献 |
研究概要 |
平成24年度は、研究代表者の佐藤と、研究分担者の荒川慎太郎は、平成24年9月に5日間、ロシア科学アカデミー東方文献研究所を訪問して、同所所蔵のカラホト遺跡出土西夏文文献の実見調査を実施した。 佐藤は当初予定していた西夏の法令集『亥年新法』を閲覧することが研究所側の事情によりできず、モンゴル軍侵攻期の行政文書15点の調査に切り替えた。解読の結果、そのうちのいくつかの文書から、モンゴル軍の西夏への侵攻があった1209年から10年にかけて、西夏の中央政府が対モンゴル最前線の辺境であるカラホトから都を警備する近衛兵を召集しようとしたものの、思うように集まっていないことが付きとめられた。西夏の近衛兵は、中央官僚への昇進ルートになっているにもかかわらず、人員が集められないのは、召集にもとになっている戸籍類に実在しない人物が登記されていた可能性や、戦乱で召集の対象となる人員が死亡・逃亡していた可能性が考えられる。 荒川は、同所所蔵のモンゴル軍侵攻期およびその直前期の仏典20点を調査し、発願者の特定や経典名の確定を行なった。その結果、これまで同研究所が付していた仏典名に誤りがあることを指摘できたほか、発願者の中にカラホト以外の河西回廊出身者がいることを明らかにし、仏教の力によって外敵からの侵入を防ごうとすべく、各地の人々がその信仰を重視していた可能性が明らかになった。 研究協力者の冨田裕子は、平成25年度に実施するロシア科学アカデミー東方文献研究所での実見調査の準備段階として、東京の財団法人東洋文庫にあるカラホト出土の西夏文法令集『亥年新法』巻4のマイクロフィルム画像を調査した。調査の結果、当該法令集の文章は、非常に崩れた草書体で書かれており、写真では判読し難い箇所があることが判明し、その解読には、ロシアでの当該法令集の実見調査が必須であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
佐藤のロシア科学アカデミー東方文献研究所における調査は、研究所側の都合により、当初予定していた『亥年新法』の物資補給・国境管理体制に関する条文の調査ができなかった。しかし、平成25年度に調査を行う予定であった、モンゴル軍侵攻期の行政文書の調査の一部を平成24年度に前倒しして実施することによって、西夏の防衛体制の実情の一端を明らかにすることができた。よって、25年度までの2年間の研究計画という枠の中で見れば、研究はおおむね順調に進んでいると言える。 荒川のロシア科学アカデミー東方文献研究所における仏典の調査もまた、研究所側の文献の整理の都合により、希望していた全ての仏典の調査ができたわけではないが、平成25年度調査分を前倒しして調査をしており、これも比較的順調に進んでいると言える。 冨田の財団法人東洋文庫での調査は、当初の予定通り実施できた。冨田が調査の対象とした西夏文の草書体は解読が難しいことが判明したが、今後メンバー全員による当該文献の検討会や平成25年夏に実施予定のロシア科学アカデミー東方文献研究所での実見調査によって、課題は克服できると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
佐藤は、平成24年度のロシアでの調査で実見できなかった法令集『亥年新法』の物資補給や情報伝達等に関連する条文や、数点の行政文書を平成25年夏に実見調査し、解読を進める。 荒川が担当する仏典の調査は当初の予定通り、残るモンゴル軍侵攻期及びその直前期の仏典の調査とそれに基づくカラホトにおける仏教信仰の実態解明を目指す。 冨田が扱う法令集『亥年新法』の軍制に関する条文は、草書体で書かれており、現時点では判読が難しいが、本研究メンバー全員でのテキストの検討会(平成25年4~5月に実施予定)を通じて解読の手がかりを見つけ、判読の難しい箇所は平成25年度実施予定のロシアでの実見調査によって解読を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度分の経費の一部を平成25年度に繰り越した。この繰越金は主に、平成25年4・5月にメンバー全員が参集して調査結果の報告会や、判読が難しい草書体文献の検討会を実施する際の費用として使用する。
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