佐藤・荒川は、平成26年度までに実施したロシア科学アカデミー東方文献研究所での西夏語文献実見調査でなお疑義のある個所を再確認するため、改めて同研究所を訪問して西夏の行政文書や仏典の奥書を実見調査した。 また、平成26年度に別事業で中国の敦煌莫高窟や瓜州楡林窟の壁画題記を調査したところ、モンゴル軍侵攻期に書かれたとみられるものが発見されたことから、佐藤は本研究事業の一環として平成27年12月に敦煌莫高窟を訪問し、未調査の題記を実見調査した。 佐藤・荒川ならびに研究協力者の冨田裕子の研究成果を取りまとめ、平成27年2月に冊子体の研究成果報告書を作成し、1210年ごろのの西夏では、都を守る兵力が不足していたこと、脱走兵およびその監督者に対する罰則規定が法令で強化されていること、対モンゴル国境近くのカラホト遺跡から発見された仏典の奥書の内容や刊行された仏典の種類を見る限り、モンゴル侵攻を意識した仏典の刊行事業は検出できないことが明らかになった。 以上の研究成果は、平成27年3月に開催された遼金西夏史研究会第15回大会、東京外国語大学で開催された国際ワークショップにおいて口頭報告を行ったほか、国内外の学術誌にその成果の一部を投稿した。
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