平成27年度は、昨年に引き続き、1635年に朝鮮通信使の副使として訪日した金世濂について検討した。金世濂が書き残した日記『東溟海槎日録』には、イエズス会士マテオ・リッチの世界図を見たとする文言が記されているのだが、実際の所、彼が見たのはリッチのどの世界図だったのか、あるいはその世界図をどこで見たのか、検討を行った。考察した内容については、「朝鮮仁祖代金世濂が見たマテオ・リッチの世界図」(『高橋継男教授古稀記念東洋大学東洋史論集』、汲古書院、2016年)と題して発表した。 平成24年から27年にわたって近世朝鮮における漢訳西学書の伝来と受容に関する研究をおこなった。対象とした時期は「近世」となっていたが、実際に史料を通して検討できた時期は、宣祖代後半の1590年代から1635年までであった。この時期に朝鮮に伝えられた漢訳西学書を示す史料は多くなく、個人の文集に記される事実も少なかった。1640年代以降に朝鮮に伝えられた漢訳西学書については今後とも追跡していきたい。
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