研究課題/領域番号 |
24520803
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆郎 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60464260)
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キーワード | ワクフ / エジプト / シリア / マムルーク朝 / 公益 |
研究概要 |
本研究の目的は、次の3つである。(1)マムルーク朝時代ワクフのケーススタディを進める、(2)ワクフ経営の変遷を長期的に追跡する、(3)ワクフの諸問題とそれらについての議論及び影響を明らかにする。 このうち(1)に関わる成果としては、特に英国・オクスフォードにおけるマムルーク朝時代関連資料の調査を挙げることができる。中でもボドリアン図書館所蔵のMS. Arab. c. 86 (R)を精査できたことは、大きな収穫であった。同文書は断片ではあるが、14世紀後半のダマスクスにおけるワクフ設定文書である。マムルーク朝時代のワクフ設定文書は、そのほとんどがエジプト、中でもカイロに関するものであり、シリアに関するものはわずかしか伝存していない。その意味で同文書は非常に貴重な史料である。現在その校訂を進めている。また、昨年度にシカゴ大学図書館で調査したバルスバーイ(在位1422-38年)のワクフ設定文書集およびアミール=クルクマースの1500年に始まるワクフ設定の文書集の別バージョンがドイツのゴータ図書館に所蔵されていることがわかったので、それらの複製を注文したところである。 また(3)については、スユーティー(1505年没)とワクフ問題との関わりを検討しており、その成果をイタリア・ヴェネツィアで開かれる学会で発表する予定である。 その他、(1)-(3)いずれの目的についても、関連する刊行資料を収集し検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度のアメリカ・シカゴ大学図書館での調査に続いて、25年度は英国・オクスフォードにおいてマムルーク朝時代のワクフ関連資料を調査したことにより、目的(1)に沿った研究を進めることができた。 目的(2)と(3)についても、関連資料を収集し検討を進めており、成果を挙げつつある。
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今後の研究の推進方策 |
26年度にトルコ・イスタンブルに赴き、資料調査・収集をおこなう。目的(1)と(3)について、検討・考察結果を論文にまとめて公表する。(2)については、入手した史料に基づいた検討を進める。 海外での資料調査・収集は、情勢が許せば、27年度にエジプト・カイロで集中的におこないたい。 また、いずれの目的に即した研究においても、成果を積極的に公表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年夏にエジプト・カイロ、トルコ・イスタンブルでの長期の資料調査を予定していたが、政情不安のため延期し、代わりに英国・オクスフォードで短期の調査をおこなったため。 26年度に当初予定していなかったヴェネツィアでの成果発表をおこなうほか、イスタンブルで資料調査することにより、次年度使用額も含めた26年度の予算額を有効に使用する予定である。
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