本研究は、エジプトとシリアにおけるワクフ(寄進・財団)制度の理念と現実の相関を、マムルーク朝時代(1250-1517年)を中心に明らかにし、ワクフ研究、さらには公益や福祉に関する比較史研究を展開していくことに寄与することを目指すものである。具体的には、次の3点について研究を行った。(1)主に文書史料に基づくマムルーク朝時代ワクフの事例研究、(2)ワクフ経営の変遷の長期的な追跡、(3)ワクフの諸問題とそれらについての議論及び影響の解明。この研究期間中にいくつもの文書史料を「発見」し、特に研究項目(1)で大きな成果をあげることができた。
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