研究課題/領域番号 |
24520805
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
矢澤 知行 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (60304664)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換,中華人民共和国 |
研究概要 |
元代における漕運の展開過程の再検討に着手し,関連する基礎史料や先行研究の見直しを進め,既知の実証的データを再点検する作業を行った。並行して,(財)東洋文庫,復旦大学歴史地理研究所などにおいて関連史料を収集し,それらの整理,分析を行うことができた。また,関連文献についてもCNKI(中国学術情報データベース)などを通じて網羅的に収集し,文献データベースEndNote に入力して整理と分類を行った。 本研究の中心課題である元代の両淮・両浙地域における漕運・塩流通の実態解明に着手した。水運・海運網や塩場の整備過程を整理して年表を作成するとともに,漕運ルートや拠点都市,塩の生産地・集散地・行塩地の分布などを示す歴史地図の作成を開始した。また,当時の漕運や塩の流通に関与した多様な商業/都市エリートをリストアップし,彼らに関する情報をリレーショナル・データベースに入力し,整理・分析する作業を行った。 以上の作業は,モンゴル政権による江南経済支配の特質や,その世界史上の意義,元代江南の社会経済と宋代・明清代との連続性あるいは質的相違といった学術的課題を明らかにするための礎石として不可欠なものである。 本研究の成果の公表に関しては,学術論文「前近代中国の伝記資料を読む」(愛媛大学「資料学」研究会編『歴史の資料を読む』創風社出版,2013年)をすでに公刊したほか,学術論文「元代における漕運の展開過程」を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する基礎史料の収集と先行研究の見直し,既知の実証的データの再点検,それらの整理・分析については,当初の計画通り達成することができた。また,本研究の中心課題である元代の両淮・両浙地域における漕運・塩流通の実態解明についても,年表や歴史地図の作成,商業/都市エリートのリストアップ,リレーショナル・データベースへの入力といった作業を順調に遂行しつつある。 当初の計画では,年度内に学術論文「元代における漕運の展開過程」を執筆・投稿する予定であったが,この点についてはやや遅れている。ただ,次年度以降に計画していた,本研究と元末の諸勢力に関する研究とを関連づける学術論文「前近代中国の伝記資料を読む」(愛媛大学「資料学」研究会編『歴史の資料を読む』創風社出版,2013年)を今年度中に先取りして公刊することができたので,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,漕運・塩流通の実態解明に向けての研究を進展させる。まず,前年度までにリストアップした多様な商人集団や官僚(約300名)のうち,分析対象となる人物を絞り込む。元代中~後期にかけての動向を具体的に把握できる人物についての関連情報を逐次データベースに入力する。彼らの出自や江南(江浙行省・両淮行省・江西行省)での異動歴,官僚としての事績などに加えて,リレーショナル・データベースの利点を活かし,官僚相互の人間関係や,塩商・海商や豪民・勢豪などとの人間関係(親族関係・姻戚関係)にまで踏み込んだ分析を行うことによって,彼らの社会的性格,経済的基盤,モンゴル政権との関係などを解明する。それらの研究経過をまとめ,「元代の両淮・両浙における商人集団・官僚の動向」をテーマとした研究発表を行うとともに,研究論文の執筆と投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外において最新の研究動向を摂取し,関連史資料の収集を行うため,旅費を使用する計画がある。また,所属機関において主として使用しているデスクトップPCが買い換えの時期にさしかかっているため,その購入のための物品費を確保している。
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