研究課題
1.本研究計画の目的は、戦後内戦期から中華人民共和国初期に至る中国について、国家権力の社会への浸透如何、国家による社会の制度的組織化如何という視点から、<国家-社会>関係の変容と再構築の過程を明らかにすることにあった。今年度も、昨年度に引き続き研究実施計画に示した「研究実施の基本的サイクル」に基づき、順調に研究を進めることができた。2.研究代表者の金子は、本研究計画期間に蓄積した成果を総合する形で、近現代中国の税政と同業団体による同業者統制について包括的な報告を行うとともに、台湾・台北において開催された日中戦争国際シンポジウムで、戦後中国の貨物税制度の実態と同税政をめぐる上海の同業団体と税務当局との対立について報告を行なった。研究分担者の水羽も、これまでの研究成果を総合した1930年代~40年代における中国リベラリズムに関する論考を発表し、また笹川は日中戦争期から戦後内戦期に至る中国の総力戦体制と戦時動員が農村基層社会に及ぼした影響、戦時動員と災害との関係について論文を公表した。3.本研究計画に必要な史料を収集するため、今年度も金子・笹川・水羽は上海市档案館に赴いて文書史料の収集に当たった(8月実施)。なお、研究打ち合わせ会については、昨年度同様、上海での史料調査の際に1回、また広島と東京で各1回行った。4.4年間の研究期間を通じて、研究代表者の金子、分担者の笹川・水羽の3名は、それぞれ都市、農村の国家と社会の関係について実証的成果を着実に公表することができた。戦後内戦期から中華人民共和国初期の中国については、近年、歴史学的アプローチによる研究成果が蓄積されつつあるが、本研究計画のような視点に基づき政治的・社会的秩序の変容・再構築を包括的に検討した試みはこれまでなかった。その意味で、本研究計画の実証的成果は、今後、当該時期の歴史的知見を深めていく上で大きな意義を有している。
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Journal of Modern Chinese History
巻: volume 9, number 1 ページ: pp.66-94
10.1080/17535654.2015.1030828