研究課題/領域番号 |
24520810
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
阿部 幸信 中央大学, 文学部, 教授 (60346731)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 亀鈕(国際情報交換、中国) / 漢印(国際情報交換、中国) / 地域性 / 南方文化(国際情報交換、中国) |
研究概要 |
〔データベースの作成〕国内外の博物館・美術館の図録本や印譜を活用して、現存する亀鈕印のデータベース化を進めている。本年度は羅福頤〔編〕『秦漢南北朝官印徴存』(文物出版社、1987年)・孫慰祖〔主編〕『両漢官印匯考』(上海書画出版社・大業公司、1993年)両書所掲のものを中心に、入力作業を行った。 〔図録本の活用〕『中華五千年文物集刊』璽印編(中華五千年文物集刊編輯委員会、1985年)・『中国美術全集』書法篆刻編7「璽印篆刻」(上海書画出版社・上海人民美術出版社、1989年)に掲載された亀鈕印の写真を整理し、今後の形状分析のための基礎的なデータを蒐集した。これによって、時代ごとの形状の変化に関する初歩的な見とおしを得たが、確定・公表できる段階には至っていない。 〔実見調査〕8月、南京市博物館および東晋博物館・江寧博物館(いずれも江蘇省南京市)において、先秦~魏晋期の亀鈕印を実見した。また、3月には湖南省の湘西地域を訪れて、亀鈕印を生み出したと目される中国南方の(現在では少数民族とされている人々の)文化・風俗をつぶさに調査するとともに、慈利博物館(湖南省張家界市)・荊州博物館(湖北省荊州市)をはじめとする各地の博物館において、先秦~魏晋期の印章を実見した。その中には、これまで注目されていなかった貴重な遺物も含まれている。 〔成果の公表〕3月、武漢大学簡帛研究中心において、「日本所蔵漢代印章和封泥―以諸侯王印、少数民族印為中心」と題する講演を行い、亀鈕を含む動物鈕の起源や制度化・変遷のプロセスについて、現地の研究者と意見を交換した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベースの作成・図録本の活用については、計画にほぼ沿って進行中である。 博物館での実見調査に関しては、日程の確保や関係機関との調整が順調に進まず、当初計画していたかたちでは進まなかった。とりわけ南京博物院については、改修工事が終了する2014年までは調査の実施が不可能であることから、延期を余儀なくされている。が、その一方で、計画していなかった場所において調査の機会を得ることができたことから、トータルでみれば順調に進んだということができる。また、今年度実施できなかった上海博物館の調査については2013年11月に実施できることが決まり、その他の場所での調査についても今年度のうちにおおよその目途がついたことから、将来に向けた準備は計画以上に進行したものと考える。 成果の公表については、予定どおりに口頭報告を実施することができた。 以上を総合して、研究全体はおおむね順調に進展していると認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
データベースの作成・図録本の活用、ならびに成果の公表については、計画に沿って進行するよう努める。 不確定要素があるのは、博物館での実見調査である。上海・南京・北京・武漢での調査については、すでに仲介者が確定して実施時期も決まりつつあり(上海は2013年11月、南京は2014年~15年中、北京は2014年8月、武漢は2014年2月)、長沙・西安での調査も仲介者が決まっているが、山東省博物館についてはまだ見とおしが立っていない。この状況の打開に向けて努力していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
関連書の購入に要する経費や関係者との通信のために必要とされる経費、論文別刷の作成・発送のための経費については、必要に応じて使用する。 旅費は、博物館での印章の実見調査や、地域性の把握のための現地調査に使用する。現時点で、11月に上海博物館で、2月に湖北省博物館で、それぞれ実見調査を行う予定である。また、11~12月には、江淮地域の現地調査も実施する。 謝金は、博物館での実見調査の際に支払う文物管理費、ならびに成果公表の際のネイティブチェックの際に使用する。
|