研究課題/領域番号 |
24520812
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
杉本 浄 東海大学, 文学部, 講師 (70536763)
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キーワード | 鉱山史 / インド近現代史 / 鉱山技師 / 技術史 |
研究概要 |
本研究は近現代インドにおける鉱山開発史の体系化という大きな展望の下で、その基盤形成を行うことを目的とし、3年間の研究期間中に以下の2点を検討するものである。 ①イギリスの植民地時代における鉱山開発の展開を、19世紀中の数多くの地質調査から20世紀初頭(第1次世界大戦前)の開発が活性化しはじめるまでの過程を精査し、世界の動きと連動させるとともに、②地質学、機械学、経営学といった当時の最先端技術や知識を有したヨーロッパ人技師と彼らの人的ネットワークについて検討する。 以上の2つのテーマにおいて長期的研究の端緒を開き、その基盤を形成するために、地道な文献収集と整理を大きな課題とした。 2年目は昨年に引き続きイギリスの英国図書館を中心に19世紀後半から20世紀初頭の鉱山関連の文献を収集した。これらはインドにおける各種鉱山開発に関する、鉱山ライセンス契約の政府への書簡を中心とするものである。また、インド・オディシャー州の州立文書館においても、20世紀初頭の文献調査を試みた。他、国内のアジア経済研究所などにおいて関連文献の収集を行った。なお、アメリカ、イギリス、ドイツなどの他地域における鉱山開発に関する必要な二次文献の収集はほぼ終了している。 こうした史資料をもとに、現在は20世紀初頭に鉄鉱石鉱山の先鞭をつけ、国内資本初の製鉄所に供給されたグルマヒサニ鉱山開発に注目し、地質学者Pramatha Nath Boseと土地を提供した藩王Ram Chandra Bhanj Deoおよび実業家のJamshetji Tataの3者が交差する点に近代鉱山の幕開けを見る論考を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドの鉱山史の体系化という目標のため、収集すべき史資料が膨大になりつつあり、収集と整理に時間を取られ、分析に十分な時間を振り分けることができなかった。例えば、鉄鉱石であれば、コークスの原料となる石炭や製鉄に必要な石灰石やマンガンといった各種鉱石の鉱山との相互関係を理解する必要があるため、複数鉱山に関する史資料がいることになる。こうした事情により、当初の予定よりも若干遅れることになり、また慎重を期して本年度の発表を見合わせることになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はこれまで集めた一次文献、二次文献の整理・分析とともに、発表の準備と論文の執筆に集中する。論文については「グルマヒサニ丘陵の開山:イギリス植民地支配下における藩王、技術者、資本家」を早期に完成させる。また、インド独立以前と以後の鉱山開発を繋げつつ、科学および技術への志向性と地域性について明らかにする発表を海外(アメリカ)で行う。また、こうした執筆の間に明らかになるであろう、不足する史資料などについてはインドとイギリスで求めていくものとする。 以上を進めながら、次の研究課題をより明らかにし、今回の成果をさらに発展していきたい。
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