研究課題/領域番号 |
24520817
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田口 宏二朗 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50362637)
|
キーワード | 中国 / 河北 / 南北 |
研究概要 |
本年は以下の作業をおこなった。 第1に、昨年度いらい継続している、明代漕運に関する政書(政策・制度沿革について記した官撰・私撰文献の一ジャンル)としての曹溶(1613—1685)撰『明漕運志』につき、その訳注作業をおこない、後半部分を公刊した。この結果、谷応泰『明史紀事本末』河漕転運という比較的有名なテクストが本書の引き写しであることがほぼ確定され、河北に首都を設置したことに随伴する超巨大国家プロジェクトとしての「漕運」に関し、文献学的・歴史地理学的な研究成果をひとつ加えることとなった。 第2に、華北の首都と華中南の穀物生産地との分離を前提とした、あらたな「世界観」形成にかかわる問題(本科研での研究課題のひとつの柱である)として、中国を南北の部分集合に分ける言説の系譜とその機能を追う作業をおこなった。この作業内容についても、ごく基礎的な知見を公表するにいたった。 第3に、本研究がめざす広義の歴史社会学にとっては重要な隣接領域となる経済史研究に関連し、近世中国の長江下流地域の経済的発展をテーマとして出版された論文集に対し、特に「制度」の学説的含意の問題点を軸とした英文のレビューを執筆した。これは近日中に公刊される予定であるが、ここで展開された制度論は、本研究における「実体的経済環境」「政策」および「(共同主観としての)世界像」三者の絡みあい、という課題探究と叙述においても、大いに反映されることとなろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度予算申請時のものと若干変更も生じたが、本年もおおむね順調に進行している。特に河北経済に関する具体的経済状況からこれを構造的与件とする「中華的世界把握」の問題へと分析を深化させえた。 また、以上の状況を中国史という枠組み内部のジャーゴンだけで叙述しないために、極力経済史研究の文脈(国外のものも含め)に位置づける作業の基礎固めをおこなうことができた点も、強調しておきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
当面は、平成25年度において集中的に取り組んだ2つの領域、すなわち15世紀における世界像の生成とその再定義、およびこれによって規定された諸制度のあり方を経済史的文脈に位置づけるという作業を、明清代河北を素材として続けたい。これと並行し、当該時期を中心とする諸文献からデータを抽出するという作業も、継続する予定である。 なお、前述した事由につき、中国史GISにおける成果と本研究をリンクする作業については、当面差し控える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
中国知識基礎設施(CNKI)という分野横断の論文データベースアクセス権を購入予定だったが、本務校での財務処理の都合により、運営交付金での購入に切り替えたため。 本年度も大量の漢籍史料・関連諸分野に関する文献・電子資料の購入が見込まれる。
|