研究課題/領域番号 |
24520819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
赤崎 雄一 和歌山工業高等専門学校, 一般科目, 准教授 (10342536)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インドネシア |
研究概要 |
この研究は、インドネシアのバティック(ロウケツ染め)産業の先駆的な歴史研究である。バティックはオランダ植民地期に産業として発展し、現在では「民族産業」と理解されている。本研究の目的は、第一に、このバティック産業の成長過程を明らかにすること、第二に、バティック企業と労働者との関係、雇用方法、賃金、失業者の問題などから地域社会にバティック企業が及ぼした影響について検討することである。今年度はその手始めとしてオランダ・日本の文書館に残る史料を網羅的に収集した。 オランダでの史料調査は7月31日から8月9日にかけてハーグにある国立文書館、ライデンにあるオランダ王立言語地理民族学研究所、アムステルダムにある王立熱帯研究所で行った。国立文書館では蘭領東インドの植民地政庁からオランダに送られてきた行政文書、蘭領東インド州理事の引き継ぎ文書、鉄道会社の報告書などの一次史料を閲覧し、複写した。オランダ王立言語地理民族学研究所は蘭領東インドから現在のインドネシアに関する刊行物を最も網羅的に収集している研究所であり、植民地経済に関する雑誌、インドネシア語出版物などを閲覧した。王立熱帯研究所でもその他の植民地経済に関する雑誌を閲覧した。 10月3、4日には広島大学図書館所蔵の三井文庫の史料調査を行った。三井文庫は三井本社からの寄贈資料であり、戦前の経済、貿易関係の資料が中心である。その中に戦前に発行されたジャワ島の繊維製品に関する日本語文献が多く存在し、それらを複写することができた。 現在はジャワ島全体のバティック産業の展開を整理している。その後、いくつかの地域に研究対象を絞り、さらに詳細な研究を進めるつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画のうち最も重要なものはオランダと日本への史料調査である。従来の植民地期インドネシアのバティック産業に関する歴史研究はわずかであり、その多くがカット・アンジェリーノによる報告書Batikrapportの記載に頼るのみであった。そのため、この報告書以外の新たな史料を求めるために調査を行った。 この調査によって当初の予想を上回る多くの史料を収集することができた。バティック産業の中心地であるスラカルタ以外に、北海岸の都市プカロンガン、チルボン、ラセムなどのバティック産業に関する史料を発見できた。ただ収集したものが主に1920年代、30年代であり、19世紀末から20世紀初めにかけての史料が少ないことは少し問題である。 調査終了後、その整理と分析を進めている。収集した史料が多くなったため少し時間がかかっているが、それ以外はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は1年目で収集した史料を読み込み、まずジャワ全体のバティック産業の概観、バティックと世界市場との関わりについての理解を深めたい。次に、インドネシアで史料調査を行う。この調査が済み次第、これまで収集した史料の分析をさらに進める。できれば年度内にその途中経過を研究会で報告したい。 その最初のテーマとして考えているのが、19世紀半ばから20世紀前半の時期のバティック産業の展開である。この時期には、イギリス製、オランダ製機械織り綿布が流入し、チャップと呼ばれる銅製のスタンプによるロウ置きが導入され、輸入された化学染料が普及した。このように世界市場との関わりが強まり、産業に大きな変化が生じていた時期である。 平成26年度以降は、第一次世界大戦、世界恐慌などがバティック産業とその地域社会にどのように影響を及ぼしたのかを引き続き検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の内訳で最も大きいものは、インドネシアの調査費用である。2週間ほどの日程で、ジャカルタにあるインドネシア国立図書館、バティック産業で有名なスラカルタ、チルボン、プカロンガン、ラセムでバティック企業の調査を行いたい。 インドネシア国立図書館では、オランダ・日本で入手することが困難なインドネシア人研究者・ジャーナリストによる文献、インドネシア語による植民地期の小説と新聞記事などを調査する。バティック企業の調査では工場・博物館などの見学、もし可能であれば社史などを入手したい。 その他は研究報告のための旅費、図書などの消耗品の費用である。 前年度のオランダ調査において、購入した書籍の価格が予定より少なかったため若干の未使用金が生じた。この分は次年度の調査における図書の購入費などに当てたい。
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