研究課題/領域番号 |
24520820
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研究機関 | (財)古代オリエント博物館 |
研究代表者 |
津村 眞輝子 (財)古代オリエント博物館, その他部局等, 研究員 (60238128)
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キーワード | サーサーン朝ペルシア / 初期イスラーム時代 / 銀貨 |
研究概要 |
前年度同様、国内外のサーサーン式銀貨の情報のデータ化を進めた。 サーサーン式銀貨における後刻印、擦痕、墨書等の実地調査については、既に国内調査については結果の一部を”Scrapes and Countermarks on Sasanian and Sasanian-type Silver Coins of the 6th-7th Centuries (1)”としてBulletin of Ancient Orient Museum XXXIIに発表している。調査結果から、初期イスラーム時代に実施されたサーサーン式銀貨の後刻印を「擦痕」という要素を含めて再分類するという方向性の確証を得る事ができた。その概要を第19回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会にて「サーサーン式銀貨の後刻印再分類への試み」として報告した。海外調査としては、後刻印を持つサーサーン式銀貨を最も多く所蔵する博物館の一つであるイギリスの大英博物館の調査を、西アジア貨幣の研究者である同博物館研究員のDr. Vesta Sarkhosh Curtisの協力を得て実施した。アシュモレアン美術館ではコイン部門のDr Luke Treadwellの協力をえてデジタル顕微鏡を使っての調査を実施することができ、サーサーン式銀貨につけられた擦痕が鋭い刃物によって数回にわたってつけられているというデータを収集することができた。 本研究の大きな最終目標は、サーサーン式銀貨がサーサーン朝ペルシア領域内外でどのように利用(模倣も含む)されてきたかを知ることにある。したがって、以上のサーサーン式銀貨の調査と平行して、当時のサーサーン朝ペルシアと周辺地域の歴史的概観の把握にもつとめた。2012年度は東領域の状況を把握すべくインド、パキスタン方面のコインについての実地見学等を行ったが、2013年度は西側境界域、すなわちユーフラテス川領域におけるサーサーン朝ペルシアの実態を把握すべく、シリア北部の遺跡から出土するコインおよび関連資料の再検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サーサーン式銀貨の後刻印についての海外調査については2013年度に予定していた機関を全て網羅できたわけではない。しかし、先行研究の核となっている大英博物館所蔵コレクションの精査が終了し、再分類を可能とするデータが固まった。イラン所蔵資料については、当初現地調査を予定していたが現地調査が困難な時期にあったため、現地研究員のDr. Daryoosh Akbarzadehの協力でデジタルデータを送付してもらい、データベース化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は最終年であり、カタログ等でデータ化した海外所蔵資料の最終確認を実施し、公開する準備を進める。
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