本研究の目的は、西アジア、中央アジアにおいて複数の政権が林立する地域において異なる貨幣や度量衡制度がどのように共存したか、信用度の高い貨幣がどのように利用、継承されたかを検討するものである。具体的には、サーサーン朝ペルシアおよび初期イスラーム政権が発行した信用度の高い「サーサーン式銀貨」が西アジア、中央アジア、中国西域でどのように流通し、利用されてきたかを、実際に出土する貨幣や度量衡関連の遺物を丹念に精査することで、その実態に迫った。 特に、コインが流通する中で付加される要素(墨書、後刻印、擦痕、針書等)に焦点をあて、中国新疆出土の900枚のサーサーン式銀貨の精査から得られた情報を核として、国内外の美術館、博物館、個人所蔵の資料を調査したデータを整備し、分類を実施した。 調査結果は適宜学会等で発表した。最終年度は特に調査の一般公開につとめ、研究協力者であるダリユーシュ・アクバルザーデ氏(Professor Daryoosh Akbarzadeh:イラン文化遺産観光庁イラン学研究所教授)を日本に招聘して講演会を実施したり、古代オリエント博物館にて古代ペルシアの文字に関する小企画展示や文字の展覧会にてサーサーン朝ペルシアの銀貨について紹介した。また、代表者によって「古代オリエントのコイン : サーサーン朝ペルシアとその境界域のコイン」とする講演会(古代オリエント博物館)や「シルクロードを渡るコイン」(奈良・シルクロードの会講演会)の講演を行い、学会等で発表した内容を一般向けに紹介した。
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