本研究の目的は、サーサーン朝ペルシアおよび初期イスラーム政権が発行した「サーサーン式銀貨」が、周辺地域または後の時代にどのように流通、継承されたかを、出土資料から得られる情報をもとに検討することである。具体的には、コインが流通する中で付加される「後刻印」(コインの端に打たれる小さい刻印)に注目した。一括出土コインを精査することで、後刻印がコイン裏面の深い傷「擦痕」と密接な関係にあることを実証し、後刻印は周辺政権が信用度の高い既存銀貨を利用する手段であり、擦痕は銀質検査である可能性を指摘した。その観点から国内外所蔵のサーサーン式銀貨の後刻印データを集め、後刻印の最分類を実施した。
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