1.最終年度の研究成果 本研究の主要な分析対象地域は、フランス西部に位置する「広域西部地方(Grande Ouest)」であるが、最終年度は、地域的な比較対照をおこなうことを目的として、フランス南部に位置するラングドック・ルシヨン地域圏を構成する5つの県(ガール、エロー、オード、ピレネ・オリアンタル、ロゼール)についてデータの収集と分析をおこなった。具体的には当該5県の県文書館において、第二帝制期の官選候補制度に関する資料調査をおこなった。発見した資料については現在分析を継続中であるが、地域的な比較対照を経たうえでも、広域西部地方を対象とする昨年度までの研究からえられた知見は十分に説得的なものであることが想定できる。
2.研究機関全体を通じた研究成果 本研究は、フランス第二帝制期立法院議員選挙における官選候補制度を対象として、既存のプロソポグラフィ分析の成果を活用するべく、同分析の成果を「比較、ギャップ導出、バイアス確認」という手法を用いて利用する(応用プロソポグラフィ分析)ことを目的とした。具体的には、応用プロソポグラフィ分析をもちいて政治的エリートが持つべき属性のイメージを分析すると、同時期については「地主から商工業者へ」というトレンドが存在することが明らかになった。この結果は、これまでの通説たる「フランス革命から19世紀末に至るフランスでは、地主を中核とする名望家が、一貫して政治的エリートの位置を占めていた」という理解に対して疑義を呈しうるものである。
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