研究課題/領域番号 |
24520824
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 豊志 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10243619)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 白人性 / 南北戦争・再建 |
研究概要 |
平成24年度は研究の初年度にあたるため、研究の理論的枠組みの構築作業にとりかかるとともに、関連資料の収集と今年度の課題の検討をおこなった。さらには、以上の作業をふまえた研究成果を公刊した。その具体的な研究実績は以下のとおりである。 まず研究の理論的枠組の構築については、白人性研究の最新の動向の把握をおこなった。本研究の独創的な点は南北戦争・再建期の黒人関連立法を白人側の意識と利害が反映した「白人立法」ととらえ、その立法意図を「人種のポリティクス」という枠組みから検討する点にあるため、白人の人種意識に注目する白人性概念の理論的精緻化を進めた。 これと並行して南北戦争期の軍務立法に関連する資料の収集と再検討、および当該期の軍務問題の検討をおこなった。今年度、軍務問題に焦点を絞ったのは、南北戦争後の再建期に白人側の人種意識が変化し、伝統的な白人性が解体される契機になったのが南北戦争への黒人の参戦と考えられたからである。すなわち、それまで白人性の象徴であった軍務から人種性が解消され、多くの黒人が軍務を遂行したことによって、戦後に「市民=兵士論」の観点から黒人に市民性を認可せざるをえない状況が出来したのであった。以上から戦時中の軍務立法の制定過程に注目し、軍務における白人性の解体過程を追跡した。 最後に、軍務における白人性の解体が戦後の黒人関連立法に影響を及ぼした具体的事例として選挙権における人種差別を禁止した合衆国憲法修正第15条に注目し、その成立過程を追跡することにより、戦後に同条によって黒人の選挙権が保障された背景には南北戦争時の黒人の軍事的貢献があったことを明らかにする論考を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書においては「研究の目的」として、本研究の理論的枠組みの構築、研究に関連する一次・二次資料の収集・整理、および南北戦争期の軍務立法における白人性の分析を掲げた。上記の「研究実績の概要」に記したように、いずれの目的もおおよそ達成できたといえるが、関連資料の収集において若干の遅延があったため、上記の自己点検評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた知見を基にして、次年度は主として労働立法における白人性の解体過程を分析する。その具体的な推進方策は以下のとおり。 まず、黒人の労働立法にかかわる基礎的資料の収集・整理をおこなったうえで、労働における白人性の解体という観点から以下の検討課題に取り組む。 1.白人性からみた合衆国憲法修正第13条の検討(南北戦争の戦争目的転換過程の検討、修正第13条の成立過程と世論の動向の分析、修正第13条による労働の白人性解体分析) 2.白人性からみた1866年市民権法の検討(奴隷制廃止後の解放奴隷の労働実態の検討、1866年市民権法の立法過程と世論の動向の分析、1866年市民権法による労働の白人性解体分析) 以上の作業をふまえて、南北戦争後の労働における白人性の解体の意義について総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、ひとつに当初計画していた現地資料調査を次年度に延期することによって、いまひとつに関連書籍の納品が遅延したことによって生じたものである。同使用額は延期した現地資料調査に必要な経費として、および納品が遅延した関連書籍の購入費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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