研究課題/領域番号 |
24520824
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 豊志 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10243619)
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キーワード | 白人性 / 南北戦争 / 合衆国憲法修正第13条 / 1866年市民権法 |
研究概要 |
研究の2年目にあたる平成25年度においては、前年度に理論的精緻化をおこなった白人の人種意識としての「白人性」概念を分析概念として、南北戦争後の奴隷解放にともなう、労働における白人性の解体について検討をおこなった。 具体的には、戦後の1865年に成立した合衆国憲法修正第13条をたんなる奴隷解放条項としてだけではなく、奴隷労働という黒人性が刻印された労働の廃止条項とみなす立場から、同条項の成立過程とそれに対する世論の動向の検討をつうじて、同条による労働からの白人性の解体過程を追跡した。 いまひとつは、白人性の観点からの1866年市民権法の検討である。一般に同法は解放奴隷の市民権保障立法とみられているが、ここにおいても同法を労働立法とみなす観点から、奴隷制廃止後の解放奴隷の労働実態をふまえたうえで、同法の成立過程とそれに対する世論の動向の分析つうじて同法が目指した労働からの白人性解体過程を追跡した。 以上の作業をつうじて、南北戦争後に共和党が支配した連邦政権は、まず修正第13条によって奴隷身分という人種化された労働階級を廃止し、ついで1866年市民権法によって労働そのものから人種性を排除することをつうじ、労働面における人種の序列化を解消したことが明らかになった。 以上の労働における白人性の解体作業は、南北戦争という内戦を経験した合衆国が国民の再統合を図るにあたって真っ先に取り組まなくてはならない「人種のポリティクス」であったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画は上記の「研究実績の概要」にあるように、おおむね予定通りに達成することができた。ただし、関連する基礎的資料の入手において若干の遅延があったため、上記のような自己点検評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度、および平成25年度に得られた知見をふまえつつ、研究の最終年度にあたる平成26年度は主として市民権における白人性の解体過程を分析する。その具体的な研究推進方策は以下の通り。 1.南北戦争後の「黒人市民権保障立法」として知られる合衆国憲法修正第14条に関する基礎的文献を収集・整理し、その批判的再検討をおこなう。入手困難な一次資料については米国連邦議会図書館等に赴き、その入手を図る。 2.入手した資料をもとに以下の作業を順次行う。(1)解放直後の解放奴隷の権利状況の把握、(2)修正第14条の具体的な成立過程の分析、(3)同条による市民権の白人性解体の意義の解明。 3.過去3カ年の研究成果の総括として、軍事・労働・市民権における白人性解体の意義と限界を取りまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた現地資料調査に代えて、基礎的関連資料を大量に購入した。その差額が上記の次年度使用額として発生した。 次年度使用額は国内外における資料調査費の一部として今年度使用額と合わせて使用する予定である。
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