本研究は、18世紀ロシア帝国における地方行政官の動向を主要な分析対象として、近世西洋世界の「中央-地方関係」の実態解明を試みた。具体的な成果は、①1710年代から30年代にロシア各地に任用された地方行政官の個人情報の数量的整理、②同時期の中央機関における彼らの人選を巡っての情報収集や言説など、任命の原則や背景の分析、③個々の地方行政官による具体的勤務の様態と地方社会からの反応の解明、に大別される。当時の全般的な特徴として、中央政府による地方行政官人事における地縁性への配慮の乏しさ、それによる地域社会との軋轢の存在などを指摘できるが、1730年代に一定の変化が生じつつあった点も否定できない。
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