研究概要 |
平成24年度は、イタリアとスペインの古文書館に保管されているアラビア語、ギリシャ語、ラテン語羊皮紙手書き文書の写真の蒐集を開始し、入手できたものから順にその内容の検討に入った。そして、PalermoのArchivio Diocesano所蔵羊皮紙文書(Fondo Primo, nos. 14, 16, 25)、PalermoのBiblioteca Centrale della Regione Siciliana所蔵羊皮紙文書(Tabulario di S. Maria Nuova di Monreale, Pergamene, no. 45)、ToledoのArchivio Ducal de Medinaceli所蔵羊皮紙文書(Fond Mesina, no. 1119 (S 2001))等の検討から、J. JohnsとA. Metcalfe が近年提示したムスリム農民の2つの階層という見解に疑義が生じた。彼らは、M. AmariやF. Chalandonの研究以来受け継がれてきた、ノルマン・シチリア王国の2つの農民層の枠組みに従って、アラビア語史料のhursh (the rough men)とmuls (the smooth men)を、ムスリム農民の2つの階層(「登録農民(registered)」と「非登録農民 (unregistered)」)を示すものと理解したが、muls はthe rough men と対比されるthe smooth menを意味するのではなく、住民リストへの記入漏れを意味していることが明らかとなったからである。
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