アラビア語、ギリシア語、ラテン語の手書き羊皮紙文書を詳細に検討した結果、アラビア語の「ムルス」と「フルシュ」は、研究者たちが考えてきたようにウィラーヌスの二つの階層を示す一対の対照的な言葉ではなく、両者を「洗練された人(smooth men)」と「粗野な人(rough men)」という言葉で表現するのも適切ではないことがわかった。「ムルス」は既存の文書や名簿に記されていない者たちを示すために用いられた言葉であり、文書作成時に必要とされた言葉であった。それは、既存のアラビア語名簿に基づいて作成された文書による土地・住民支配の現実を反映したものであり、ウィラーヌスの二つの階層とは全く関係がない。
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