研究課題/領域番号 |
24520827
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
千葉 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20345242)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 西洋史 / 中世史 / 地形 / 隠者 / 王権 |
研究概要 |
本研究計画は、紀元千年期の隠者ネットワークの解明、聖ミカエル崇敬の拡張過程の解明、王の参籠についての解明、改革派修道士=建築家の動向の解明、の4点を研究計画の柱としている。初年度にあたる平成24年度は、紀元千年期の隠者ネットワークの解明、聖ミカエル崇敬の拡張過程の解明、改革派修道士=建築家の動向の解明の3項目を研究活動の中心にすえ、さらにその相互の連関を解明することを課題とした。まずそのための基礎作業として、紀元千年期の隠者の活動、聖ミカエル崇敬の展開、紀元千年期におけるギリシア典礼に関する研究文献を収集し、その分析をもとに現地での調査計画を策定した。この調査計画に従い、夏期休業期間(8月)の3週間を使って現地調査を行なった。今回は、フランス(とくにノルマンディー地方)における改革派修道士=建築家の活動と地形・建造物の調査、関連史料の調査・収集を行なった。調査の結果、紀元千年期の改革派修道士の活動拠点であったブルゴーニュ地方を中継地として、アルプス南麓の北イタリア(オルタ・サンジュリオ)とノルマンディー地方(ノルマンディー公の統治領域)とが、フランチェジーナ街道(ブザンソン~レマン湖~大ベルナール峠~アオスタ)を主なルートとして結ばれていたことが明らかとなった。今年度の研究を通じ、この改革派ネットワークのチャンネルと南イタリアからローマに及んだギリシア典礼のネットワークが、モンテ・ガルガーノの聖ミカエル崇敬に端を発するネットワークといかなる関係を結んでいたか、という点を解明することが、次年度以降の研究課題となることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紀元千年期の隠者ネットワークと特殊地形のネットワークに関する基幹研究地域のうち、フランス地域(ノルマンディー地方、ブルゴーニュ地方、アルプス山圏西部)に関する調査がほぼ完了した。文献収集も進み、収集した情報のデータベース化も順調に進んでいる。さらに、今年度の研究成果から、次年度以降の研究を進めるにあたり重要となる新たな知見が得られたことも特筆すべき点である。研究成果の一部は、イラン及び東京大学での英語での学会発表を通じてすでに公開しており、また今年度の刊行が確定している図書を通じて公表される予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を通じて明らかとなった紀元千年期における修道院改革派ネットワークのフランス・チャンネルと、南イタリアからローマ(グロッタフェッラータ)にまで及んだギリシア典礼のネットワークが、イタリア中部にある聖ミカエル崇敬の発祥地モンテ・ガルガーノに端を発するネットワークと、いかなる関係を取り結んでいたか、という点を解明することが、本研究計画にとってきわめて重要な課題であることが確認された。聖ミカエル崇敬は大天使ミカエルに対する崇敬であるため、崇敬拡張のうえで重要となる聖遺物が存在しないため、その伝播の具体的なプロセスの解明が難しい。この点については、今後の研究を進めるにあたり、聖ミカエル伝承の流布、聖ミカエルの図像表象の果たした役割の分析とともに、伝播の駆動力となった他の要素の解明が不可欠となる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|