研究課題/領域番号 |
24520827
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
千葉 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20345242)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 西洋史 / ヨーロッパ中世 / キリスト教 / 聖人崇敬 / 隠者 / 地形 / 王権 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、紀元千年期における特殊地形と隠者の関係を解明することを課題としており、とくに(1)紀元千年期の隠者ネットワークの解明、(2)聖ミカエル崇敬の拡張過程の解明、(3)王の参籠についての解明、(4)改革派修道士=建築家の動向の解明、の4点を研究計画の柱としている。紀元千年期の隠者ネットワークの総体を解明するために重要となるのは、神聖ローマ帝国西部地域からイングランドへのネットワークの拡張と接続の実態を把握することである。前年度までの研究成果から、神聖ローマ帝国とノルマンディー地方に存在した婚姻ネットワークと島上の山上修道院(モン・サン・ミシェル、特殊地形)および聖ミカエル崇敬の重要性が明らかとなった。3年目にあたる平成26年度は、(2)・(4)に重点を置いて研究を行ない、まず(2)については、初年度に調査を行なったモン・サン・ミシェル修道院と英仏海峡を挟んだ「対蹠地」にあたる、イギリス・コーンウォール地方のセント・マイケルズ・マウント修道院址を訪れ、実地調査を行なった。また、(4)については、紀元千年期の修道院改革の広域ネットワークのうち、大陸からカンタベリ大司教座に至る経路を画定していくフィールド調査と、それを裏付けるための史資料の調査・収集を、イングランド南部(ウィンチェスター)とフランス中部(フルリ、サン・ブノワ・シュル・ロワール)を中心に行なった。本調査では、イングランド南部とフランスを結ぶ改革派修道院のネットワークの存在が確認され、また王家の接続という点でも、オットー朝とイングランドのウェセックス王家との関係が、紀元千年期の重要な血縁関係=政治同盟をなしていたことも明らかとなった。これらの成果を踏まえ、研究年度の後半では、収集した文献と史資料の解析を進めつつ、次年度における研究成果の公表へ向けた準備を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紀元千年期の隠者ネットワークと特殊地形との関連に関する基幹研究地域のうち、アルプス山圏西部、アルプス山圏東部、ノルマンディ=イングランド南部に関する調査がほぼ完了した。関連する史資料の収集とともにその解析も順調に進み、論文での公表も間近である。過去2年間の研究成果との接合をはかりつつ、最終年度である次年度における研究課題の総括に向けて、研究は順調に進捗しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究開始当初に計画した実地踏査対象地域のうち、これまでの過去3年間の研究を経て残っているのは、ピレネー山圏の聖ミカエル崇敬の拠点群である。同圏域は紀元千年期のローマ教皇シルウェステル2世を通じて教皇座と深い関わりを持ち、またオットー3世と隠者ロムアルドゥスが参籠した場所という点で、隠者ネットワークの重要な結節点であったと考えられる。次年度は、この圏域、とりわけミカエル崇敬の拠点であるサン・ミシェル・ド・キュクサ修道院(フランス)とその一帯についての実地踏査(夏期)を中心に据えつつ、過去3年間の圏域研究との接合をはかりながら、4年間にわたる研究成果の最終的な取りまとめをはかる。
|