本研究は20世紀初頭から1920年代のアメリカ政治・社会を主たる対象として、貧困問題と国民形成、さらには人種・エスニック境界の構築との相互関係を検証した。具体的には、同時代の知識人による多様な社会的平等論や、都市改革者の救貧事業の実践、さらには第一次世界大戦前後の時期にはじまる母子保護法や都市ゾーニング立法など、萌芽的な社会政策を詳細に分析し、どのような歴史的文脈の中で、20世紀アメリカのナショナリズムと貧困撲滅、その他の社会改良が結びつき、またそのことが予期せぬ様々な分断線をアメリカの都市生活と国民社会内部に確定していったのかを考察した。
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