研究概要 |
『健康全書Tacuinum Sanitatis 』の未収集の写本の収集については、大英図書館の写本Add 18701, Sloane 3097, リエージュ大学所蔵Ms.1041の写本の実物を確認し、画像データとして研究利用できるようにした。このほか、フランス国立図書館のItalien 1108, Latin 6908, ニューヨーク市立図書館のSpencer Collection 65, オーストリア国立図書館のCode 5264, ミラノのAmbrosiana, P.161.Sup.を新たに収集した。 このような写本データの整理について、基本的作業を継続しておこなうとともに、関係が深い装飾写本と関連研究書の図版利用のため、ブックスキャナーを購入して、比較研究につなげている。 2013年8月には国内の関連分野の研究者と研究会を開催し、意見交換をおこなった。2013年9月にはボローニャ大学の研究者と意見交換をおこない、さらに2014年3月に打ち合わせをして共同研究の検討を継続することとした。 3月にはベルギーのルーヴェン大学を訪問し、同大学の研究者との協力の可能性を探ることになった。また、イタリアのトレントを訪問して『健康全書』の中でも評価の高いウィーン写本(Vid.2644)の持ち主でもあるトレント司教が描かせた「鷹の塔」の国際ゴシック様式のフレスコ画を見学して、『健康全書』の図版との共通性を確認できた。 以上のような段階であるため新しく収集したデータに基づく研究発表はできなかったが、これまでの研究に基づき包括的な生活史の史料としての『健康全書』について駒澤大学史学会大会で話したほか、5月にはビューティサイエンス学会、11月には金沢大学西洋史講演会において、特に男性服の変化に関わって『健康全書』の図版の持つ意味を論じた。
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