ヨーゼフ二世の治世(1765/80-1790)は、ハプスブルク君主国において、あらゆる領域で急激に改革が導入され、社会全体が大きな変化に直面した時代であり、さまざまな形態の印刷物が、新しい知識と情報をより広い社会層へと伝えるメディアとして機能していた。本研究では、識字率がきわめて不確実なこの時代を調査するにあたり、あえて「活字印刷物」の枠組みを離れ、銅版画という画像印刷物に着目した。ウィーンで活躍した銅版画家レッシェンコールの作品を中心に、現地の博物館に未整理のまま眠る通俗グラフィック作品を調査し、データベース化して分析することで、メディアの多様性、印刷物消費の実態に迫った。
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