研究最終年度の今年度は研究の総括として、スペイン内戦と女性亡命者についての概要をまとめた。フランスに亡命し、その後、強制収容所に収容された女性たちについて、研究を続けると同時に、スペイン人亡命者全体のなかでのフランスへの女性亡命者たちの位置づけをおこなった。 現地調査としては、ダッハウ強制収容所及び、スペイン人が多く収容されていたマウトハウゼン強制収容所を訪問し、展示や当時の様子の再現現場、映像フィルムなどから強制収容所での生活の実態についてのさらなる知見を得た。収容されたスペイン人の足跡を追うとともに、現代、こうした歴史的記憶がどのような形で継承されているのかについても興味深い示唆を得ることができた。また、イギリス、ドイツやアメリカではユダヤ博物館を訪問し、ホロコーストについてのいくつかの企画展を見学し、新しい視覚からのホロコースト研究からは大いなる刺激を受けた。スペイン、イギリス、アメリカ等の図書館、文書館等では、亡命や人の移動についての文献の蒐集及び読解を進めた。亡命先のフランスでスペイン人女性たちと同じ収容所で過ごしたフランス人女性、G.ティヨンとG.ドゴール・アントニオズが対独レジスタンスの闘志としてパリのパンテオンに移葬されたことに伴い開催された資料展示も興味深かった。スペイン内戦から80年が経過し、歴史の記憶法も社会に浸透しつつあるなかで、研究動向の推移にも着目している。 今後の研究は、スペイン内戦時代を生きた女性たちに続く子供たち、孫たちの世代に焦点を当てて、研究を続けていこうと考えている。研究成果は論文等の形で発表すべく、現在、複数の論文を執筆中である。
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