研究課題/領域番号 |
24520848
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
坂本 優一郎 大阪経済大学, 経済学部, 講師 (40335237)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国債 / 東インド会社 / 財政 / 七年戦争 |
研究概要 |
平成24年度では、当時の思潮の大勢に抗してイギリス国債をイギリス国家の国力の源泉として積極的に評価した異色の人物イサーク・デ・ピントに注目し、かれの主要な著作からその国債観の全貌を把握することにつとめた。具体的には、(1)かれを単なる思想家としてではなく当時の商業・金融の実務家としての実態を明らかにしつつ、(2)主要著書Treatise on the Circulation and credit[英語版1774年]の分析をおこなった。 (1)については、夏および冬に二度イギリスへ出張し、The British LibraryのManuscript部門にて、デ・ピントとイギリスの政治家との書簡を調査した。とくに、リヴァプール泊やハードウィック男爵との書簡のやり取りの中で問題となったのは、イギリス・フランス・オランダの各東インド会社の財政状態であった。これらの多数の書簡から、デ・ピントが当時第一級の実務的な知見の持ち主であったことが十全に明らかになった。 (2)については、七年戦争後の著されたかれの主著(公刊は1771年)、その第二版(1772年)、英訳版(1774年)、改訂版(1778年)の異同を詳細に検証した。同時に、かれの主著に対する書評を当時刊行されていた新聞・雑誌から収集するとともに、彼の主著への言及がある各種書籍についても可能な限り把握するように努めた。(1)との関連では、かれの東インド会社改革論(1773年)も入手し、マニュスクリプト分析の結果と、かれの著作での主張との相互関係を把握した。 (1)(2)はそれぞれ海外出張旅費を支出することで実施できた。また、関連書籍類およびデータベースへのアクセス権を研究費から支出して購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、デ・ピントの活動の全体像の把握および主張の精確な読解を計画目標としていたため、これらの内容については十分に達成できたと考えられる。ただ、デ・ピントに関連する資料のうちオランダに存在している史料については、所在の確認のみしか実施できなかったので、来年度の課題として継続調査する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
デ・ピントと同じくイギリス国債を積極的に評価しつつ、その取引の普及に努めたトマス・モーティマについて、かれのイギリス国家の信用論とその主張の社会的受容について考察を深める。同時代を生きた両者の相互関係を追究し、デ・ピントの国家認識がモーティマのそれから影響を受けつつ、逆にデ・ピントの公信用論がモーティマの証券取引マニュアルを経由して当時の社会に貫流していくという双方向的な相互影響のありかたを明らかにする。また、イギリス以外のフランスやオランダに存在する史料についても収取できるように努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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