研究課題/領域番号 |
24520848
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
坂本 優一郎 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (40335237)
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キーワード | 公信用 / 国債 / 七年戦争 / 啓蒙 / 財政 / フランス革命 / 投資社会 |
研究概要 |
'Every Man His Own Broker'の著者Thomas Mortimerのイギリス公信用観の概要を把握するとともに、同書の読者層を中心とした社会一般への公信用観の浸透を考察した。同時に、同時代にイギリスの公信用のありかたを積極的に評価した、Issac de Pintoの公信用観とモーティマのそれとの相互関係を解明した。さらに、両者の公信用観が、フランス革命勃発の重要な契機を提供したJacques Neckerによる国家財政運営および彼の公信用運用に重大な影響をおよぼしたことを明らかにした。その結果、水平的にはイギリス・オランダ・フランスにまたがる国際的な空間内での、公信用への施策とその実践が相互連関的に進行していた事実を、また、垂直的には啓蒙の担い手のひとりであるデ・ピントから、モーティマを経由することで社会一般の人びとにいたる広い層での公信用観の共有とそれへの反発という事実を提示できた。こうした研究結果は、従来、思想史研究、財政史研究、社会史研究とディシプリンごとに分断され、かつ、イギリス史、オランダ史、フランス史と国民国家の境界でバラバラに研究が進められてきたテーマが、「投資社会」という空間設定を導入することで、総合的に把握可能になったことを示していると考えられる。その結果、近代国家が社会一般の人々から「信じるに足る」存在として認知される過程が解明されたといえる。また、モーティマの著書に明示的に示された「公信用は特権会社の信用を上回り、かつ、特権会社の信用は経済社会一般の経済主体の信用を上回る」という図式は、今日の信用構造の萌芽をそこに見出すことが出来るものである。これらからも、市場経済に不可欠な信用構造がまさに、七年戦争直後のイギリス・オランダ・フランスで産声をあげたことを看取できるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では、平成25年度までに、1)デ・ピントの主著分析、2)デ・ピントのマニュスクリプト調査を、平成26年度までに、3)デ・ピントの国家認識とモーティマとの関係を明らかにすることになっていた。現在までに1)~3)にわたる論点をすべて調査研究することが出来ているため、上記のように評価することが可能と考える。ただし、平成25年度の調査結果、当初発見することが目的であったモーティマのドイツ語版およびフランス語版が発見できなかった。この作業は来年度にも継続して実施する。
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今後の研究の推進方策 |
研究がほぼ順調に進捗していることから、本研究課題の公表に向けて研究を進める予定である。具体的には、本年度末に単著を刊行予定している。同時に、当初予定されていた1)公信用観の社会的受容および2)モーティマによる言説の総体的な把握、3)オランダ語資料の調査収集を、モーティマの独語・仏語版の捜索とともに実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたオランダ出張が校務のため不可能になったため。また、アルバイトの雇用によって資料整理をする予定であったものの、雇用する必要がなくなったため。 平成26年度の出張計画にオランダ出張を組み込むことによって対処する予定。文献資料業務をアルバイトの雇用によっておこない、そのために必要な人件費を支出する。
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