近世最末期から近代初期にかけて、国際的な政治的秩序の変容によって、イギリスをはじめとする西欧各国で莫大な金額の公的債務が蓄積された。その結果、投資社会が拡大していくと、言説の世界でも、公信用批判から現状の客観的把握へと認識枠組みの変容がみられた。 本研究では、トマス・モーティマ『ブローカー入門』とイサーク・ド・ピント『循環・信用論』に注目し、これらが投資社会の垂直的な深化と垂直的な拡大を背景として刊行されたことを示した。また、国家への信用にもとづきつつ、投資社会の認識基軸としての「投資」と「投機」が、投資社会の原初期にすでに協約不能な対立的概念として出現したことを明らかにした。
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