研究課題/領域番号 |
24520851
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
吉村 真美 (森本 真美) 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (80263177)
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研究分担者 |
川村 朋貴 富山大学, 人文学部, 准教授 (80377233)
中沢 葉子 (並河 葉子) 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (10295743)
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キーワード | 帝国 / イギリス / 植民地 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究の目的は、19世紀イギリス帝国における帝国植民地間のヒト(人間)移動の精査な事例検証によって、ヒトおよびそのコミュニケーションの連鎖と循環で形成される帝国規模のネットワークと、諸制度や文化、思想への影響を明らかにし、イギリス帝国の構造と様態を、新たな視角から解明・検証することである。地理的にはイギリス本国およびインド、オーストラリア、カナダ、アフリカなどの各帝国植民地を基本的な調査対象とし、代表者の吉村は子ども移民と軍リクルート、分担者の中沢と連携者の水谷は、それぞれ女子教育と人種観、インドを中心とする高等教育政策を分担した。 平成25年度は、まず24年度に生じた研究分担者の変更にともなう研究計画の調整を行い、各メンバーの担当と予算配分の確認を行った。メンバーは24年度に引き続き、それぞれの分担研究を進めつつ、関連の学会や研究会に積極的に参加して、外部研究者の知見を得るとともに本課題の中間成果を報告した。特に、平成25年4月に設立された関西イギリス史研究会の第2回例会(平成25年12月26日)においては、代表者の吉村と分担者の中沢が本研究の中間報告となる研究発表を行い(連携研究者水谷も出席してコメントを行った)、外部の専門研究者からきわめて有益な示唆と助言を得ることができた。 また25年度には年度当初の予定通り、各メンバーがイギリスおよびインドへの資料調査を行い、東洋女性教育協会や児童友援協会、インド孤児収容施設など関連団体や諸機関についての貴重な一次史料を入手することができた。 これらの研究の成果を受け、現在本課題は帝国植民地のみならず、日本や韓国を含めた非英領のアジア諸地域(いわゆる「非公式帝国」およびその周辺)をも視野に入れ、それらの諸地域と「イギリス公式帝国」との比較差異検討の可能性を模索するという新たな展開をみている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に英領インドを担当していた研究分担者(川村朋貴)が外れたため、連携研究者の水谷を中心にインドについての研究をさらに分担して補うという計画修正を行った。メンバーと研究計画の変更にともない、25年度当初はやむなく研究の遅れがやや生じたが、現在は予定通り順調に進展している。またこの計画変更によって、「非公式帝国」を含めたアジア諸地域を視野に入れた、新たな方向性への展開の可能性が出てきたため、26年度からは水谷を研究分担者として加え、より一層の進展をめざしている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、所蔵機関における現物閲覧のみが可能な一次史料の海外調査を実施することで、特にオリジナリティの点で大きな研究の進展がみられた。また文書館への直接訪問によって、他の関連資料の現地における所蔵状況やその内容の詳細もより正確に把握することが可能になったため、26年度も引き続き海外資料調査を行うことでさらに一次史料を入手し、実証研究としての充実をはかる予定である。 また26年度は12月に海外研究者を招聘してワークショップを公開で開催する予定である。招聘研究者としては、海外のイギリス帝国史研究者の専門領域や近年の活動などの情報を収集し、慎重な審議を繰り返して選考したカナダ・マニトバ大学のアデル・ペリー(Adel Perry)氏との交渉を進め、すでに内諾を得ている。ワークショップの内容についても、25年度から議論を重ね、講演会の開催といった招聘研究者の一方的な知見提供にとどまらない、積極的な双方向性の意見交換の機会を設けたいという趣旨でメンバー全員が意見の一致をみ、アジアや日本を対象とする国内の研究者の参加をさらに募ることで、より自由かつ大きな枠組みでの討論の実現をめざしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、以下のような理由からである。 まず、平成24年度における研究分担者の変更(川村朋貴氏の辞退)に伴う分担金の一時的な返還が生じたため、24年度に予定していた予算執行がなされなかった。また、24年度に予定していた海外資料調査も、研究をより進展させてから遂行した方が効率的であるとの判断から、25年度に送ることになった。25年度には辞退者の返還分を再配分したうえで、各人が海外資料調査の実施を予定して予算を計上したが、それぞれの本務校における公務スケジュールのために、滞在期間をやむをえず当初の予定よりも大幅に短縮する必要が生じ、結果として作業とともに予算を翌年に残すことになった。 26年度は前年度から繰り越した予算を、まず追加の海外資料調査に充当することで、当初予定していた作業の遅れを回復するとともに、昨年度までの研究成果を踏まえた資料の調査をも行うことで、研究の一層の充実をはかる予定である。 また、ワークショップの開催に際しても、アジア諸地域との比較検討の模索という方向性を踏まえ、予算の許す範囲で国内外の専門家を招聘することで、イギリス史にとどまらない国際的な視野での帝国史研究ととしての展開を試みる予定である。
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