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2014 年度 実績報告書

異端審問制度初期の南フランスにおける権力と知

研究課題

研究課題/領域番号 24520852
研究機関ノートルダム清心女子大学

研究代表者

轟木 広太郎  ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60399061)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード異端審問 / 南フランス / カタリ派 / 司牧
研究実績の概要

今年度の目的は、初期の異端審問制を、13世紀にローマ・カトリック世界において進展しつつあった司牧革命のなかに位置づけることであった。得られた結論は、この制度はたしかに異端という信仰の敵を殲滅することを目的としていたが、それは司牧的な方法、すなわち異端者の魂の救いという観点からの介入を通じてなされた、というものである。
まず、異端審問官は異端者の自発的な自白をなにより重視した。審問の取調べ前に、進んで自白した者は軽微な罰ですまされた。また、客観的な証拠が挙がっている場合も、審問官は自白を得るべく尽力しなくてはならないとされた。これは、同時代の告解において定着していた、罪の告白がそれ自体として償いの意味を持つという考え方の影響を受けたものである。自白の追求は非常に徹底したもので、異端者に対して火刑の最終判決が決まった後でも、異端審問官は、告解と聖体拝領を求める異端者にはそれを与えなくてはならなかった。つまり、異端者のこの世の命とは無関係に、あの世の命の可能性を、司牧者たる審問官は考慮しなくてはならなかったのである。
しかしながら、告解者の罪と罰が個人の秘密の領域で進行したのに対し、異端者の罪と罰は、他の信徒との関係において問題化された。第一に、異端者は自分の罪を告白するだけでなく、他の異端者を積極的に告発しなくてはならなかった。第二に、自白した異端者が受ける罰も同様で、火刑の次に重い投獄は、異端の「病」に感染した信徒を他の信徒と切り離し、終身単独で償い生活を送らせることを目的とした。次に十字着用刑は、異端者を共同体のなかに戻すのだが、それは、他の信徒たちを危険に晒した異端者を、衆目のもとで償わせるためである。最後に、十字を取り外して行われる巡礼では、異端者は他の罪人一般のなかに紛れ込んでもはや区別がつかなくなる。
このように、異端審問は特殊な司牧活動として成立したのである。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 羊飼いとしての異端審問官―13、14世紀の南フランス―2015

    • 著者名/発表者名
      轟木広太郎
    • 雑誌名

      洛北史学

      巻: 17 ページ: 1-25

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 悪評を通じて魂を統治する ―13世紀のルーアン大司教ウード・リゴーによる巡察―2015

    • 著者名/発表者名
      轟木広太郎
    • 雑誌名

      服部良久編『コミュニケーションで読む中近世ヨーロッパ史―紛争と秩序のタペストリー―』

      巻: 1 ページ: 392-410

  • [学会発表] フランス王権と教皇権の狭間の異端・異端審問2015

    • 著者名/発表者名
      轟木広太郎
    • 学会等名
      英仏独関係史研究会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      2015-01-10
  • [学会発表] 異端審問の権力と知―13、14世紀の南フランス―2014

    • 著者名/発表者名
      轟木広太郎
    • 学会等名
      第16回洛北史学大会「宗教社会史の方法と射程」
    • 発表場所
      京都府立大学
    • 年月日
      2014-06-07

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公開日: 2016-06-01  

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