研究課題/領域番号 |
24520853
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
深澤 百合子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (90316282)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 禁農モデル / アイヌ農耕 / 雑穀農耕 / アイヌ考古学 / 擦文文化 / 松前藩 / 松浦武四郎 / 北海道 |
研究概要 |
本研究は考古学資料として鉄製、木製、貝製農耕具、微細遺物として炭化栽培種子を分析対象として使用し、擦文文化から継続してアイヌ文化においても農耕がおこなわれていたことを検証するものである。 今年度の研究はアイヌ文化期前の擦文土器を出土する擦文文化の遺跡について、調査報告書を基に既出資料の整理、編年、再構成をおこなうため各々遺物の出土状況を確認し実態を明らかにした。特に北海道で出土する擦文、アイヌ期の鉄製鍬先、鎌、斧などの資料を集成し、それらの遺跡にともなう炭化栽培種子の出土状況を調査した。炭化栽培種子は主にひえ、あわ、きび、小麦、大麦などの雑穀であるが、大麦などはさらに細分化して同定することが可能である。またイネや豆などもある。これらのことから、農耕具と生産の結果として出土する栽培種子にそれぞれ組み合わせやセット関係が存在し、なんらかの相関関係があることが考えられた。 アイヌ文化期の遺跡から出土する鉄製、木製、貝製などの農具については、出土資料に加え民俗資料も加え、農耕作業の工程に要する道具として耕起から調理にいたるまでを八段階に分類した。その分類に基づく一連の作業工程を農耕技術体系として捉え、考古学において農耕文化をとらえるときに重要な理論的視点と位置づけた。擦文、アイヌ文化のみならず、人間の社会生産活動においての農耕作業の研究において重要な意味があることを示すことができた。 文献史料に示されている農耕の実態は、近世の蝦夷地関係の古記録や史料からなかでも『戊午東西蝦夷山川地理取調日誌』(松浦武四郎1858年)から畑の記述や栽培植物の存否についての情報が抽出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの先行研究や発掘調査報告書による遺跡、遺物の出土状況は精読し、資料も実見できるものは実見できた。文献史料、民俗資料などについて近世蝦夷地における農耕研究に関係するものは確認し北海道における農耕検証のための問題などの現状について基礎的な情報は精査した。
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今後の研究の推進方策 |
発掘作業において土壌サンプル採取から炭化種子の同定までの作業をおこなう。 炭化栽培種子データはこれまで稗、粟、黍、などが既出データとして確認されているが、大麦、小麦のデータはまだ少ない。蝦夷地の大麦データは本州からの搬入か大陸からの搬入かが決め手になり、文化的接触の解明につながると考えられる、サンプル数の増加が必要である。 北海道十勝太平洋岸に位置する発掘調査が進行中の擦文時代の竪穴住居址遺跡から、土壌サンプルを採集する。この微細遺物は遺構内、遺構周辺の土を採取して、その土を水で洗うフロテーション法(浮遊選別法)によって検出される。特に住居跡床面やかまど付近などの土を採取して検出できた炭化種子を同定することで多くの栽培種子、雑穀種子が発見される。特に、床面直上の層を重点的に採取する必要がある。 したがって、擦文文化期の竪穴住居址床面直上から土壌サンプルを採取する。竪穴住居の調査はかまどの検出、床面の検出まで到達しており、土壌サンプル採取の後は柱穴の検出をおこなうことになる。床面はかまど付近を中心に方眼を設定し出土位置を明らかにする。採取した土壌サンプルは大学研究室に持ち帰り十分な乾燥をおこなった後,フロテーション装置を使用して微細遺物の炭化種子や骨片などを検出する。 検出された微細遺物は肉眼で炭化種子を確認した後、顕微鏡下において種類の同定作業を行う。この作業はかなりの時間と労力を要することになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、発掘調査から土壌サンプルを大量に採取する必要がある。このため、測量作業などをおこなう測量士や発掘調査作業員と発掘補助員の人件費が必要となる。またフロテーション装置を使用して微細遺物の炭化種子を検出し、検出された微細遺物を確認した後、顕微鏡下において種類の同定作業などをおこなう必要がある。これらの作業のために研究協力者を要請する。研究費は主に発掘調査にかかわる人件費、謝金などとして使用することになる。
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