本年度の研究は、アイヌ期以前の擦文時代の竪穴住居から栽培炭化種子が出土することを検証する目的で発掘調査をおこなった。現在継続している北海道十勝太平洋岸に位置する浜大樹2遺跡は、擦文時代の竪穴住居集落遺跡で、竪穴遺構内の土壌サンプルを採集し、その土を水を使用しフロテーション法(浮遊選別法)という方法によって、微細遺物の検出をおこなった。特に住居跡床面ならびにかまど周辺とかまど入り口の灰まじりの堆積層を重点的に土壌を採取した。土壌サンプルを採集するにあたっては、床面に方眼を設定しサンプル位置を明らかにした。当該遺構は焼失家屋と思われ、このような住居跡から採集された土壌サンプルからは炭化栽培種子が検出される可能性が高い。採取した土壌サンプルは大学研究室に持ち帰り十分な乾燥をおこなった後,フロテーション装置を使用して微細遺物の炭化種子や骨片などの検出をおこなった。検出された微細遺物は肉眼で炭化種子を確認した後、顕微鏡下において種類の同定作業を行う。この作業はかなりの時間と労力を要することになる。この一連の工程において本年度検出できた栽培種子はオオムギ1粒、キビ2粒を同定することができた。考古学の検証においてこの3粒の炭化雑穀種子がいかに多くのことを語ることができるか計り知れない。当該研究はこの3粒の存在で仮説が検証されたことになる。
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