本研究は、韓国出土資料を集成し、分布や出土点数の変化などの検討を通して、日本列島から韓半島へのヒスイ勾玉の流通過程を明らかにしようとするものである。なお、韓国出土資料は、糸魚川産のヒスイ勾玉に加え、それとよく類似した石材のものも含まれる可能性が考えられるため、翡翠勾玉として集成をすすめた。 平成27年度は、公州の武寧王陵や宋山里古墳群、完州の上雲里遺跡、栄山江流域の新村里9号墳や大安里9号墳などの資料集成を実施するとともに、これら忠清道および全羅道出土の翡翠勾玉一覧表と分布図を作成した。研究の結果、忠清道・全羅道では未報告のものを除き、翡翠勾玉が約63点(遺跡・古墳数25、遺構数43)出土していることが明らかになった。また、1~3点が単独又は頸飾として出土するのがほとんどの中、百済の武寧王陵だけは耳飾として、又は冠飾としての着装の可能性が考えられ、出土数も十数点に及ぶこと、さらに上雲里遺跡、新村里9号墳、大安里9号墳では、翡翠勾玉が複数の埋葬施設から出土していることなどが分かった。この他、慶尚道における資料集成の補足を実施した。 研究成果の報告書として、『韓半島出土翡翠勾玉集成-忠清道・全羅道編-』を作成し、刊行した。当地における集成はこれまで十分に進展していなかったが、既刊の『韓半島出土翡翠勾玉集成-釜山・金海編-』や、朴天秀・林東美2013「新羅・加耶の玉-硬玉製曲玉を中心にして-」『韓国先史・古代の玉文化研究』(福泉博物館)と合わせると、韓国における翡翠勾玉の出土地と点数がほぼ全て把握可能となり、流通過程を考える上できわめて重要な成果と言える。 なお、作成した報告書については、主要な研究機関へ今後送付する計画である。また、慶尚道出土資料についても未報告や報告書未見のものを除いて集成作業はほぼ終了しており、今後は論文化などを通して成果を公表するよう努めたい。
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