研究課題/領域番号 |
24520855
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高浜 秀 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60000353)
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キーワード | 中国 / 西周 / 春秋 / 馬具 / 銜 / シベリア / 初期遊牧民 / スキタイ |
研究概要 |
昨年の調査の結果と、中国の発掘報告書を参照して、中国におけるくつわの発達の概要を論文にまとめた(「中国初期のくつわをめぐって」『金沢大学考古学紀要』第35号)。 ロシア、シベリアのアバカン、ミヌシンスク、バルナウル、およびトゥバのクズルの博物館に赴き、資料の調査と学会参加・発表を行った。またサンクト・ペテルブルクのエルミタージュ博物館、モスクワの国立歴史博物館を訪れて、資料調査を行った。 アバカンではハカシア郷土博物館、ミヌシンスクではミヌシンスク郷土博物館において、馬具、特にタガール文化の銜を調査し、実測を行い、写真を撮影した。なかでも興味あるものは、二枝式の銜のうち、二環が異方向上にある部分で、鋳型の合わせ目の線がねじれた例を発見したことである。これは製作法の理解のために重要な手掛かりになる。クズルではアルジャン1号墳出土の馬具を見ることができた。シベリアの初期遊牧民に関する最も早い時期の馬具で、中国との関係を考える上に重要な資料でもある。アルジャン古墳群の場所も訪れることができた。エルミタージュ博物館ではタガール文化の銜を調査し、専門家と有意義な討論を行った。 バルナウルでは国立アルタイ大学を訪れて、国際学会に出席し情報を収集するとともに、新設された大学博物館で資料収集をも行った。 モスクワの国立歴史博物館では、ウズベキスタンのウイガラク出土のくつわを撮影し、実測した。これは中央アジアのサカの資料としては最古の一つである。製作法に関しては、タガール文化の通常のものと同様であった。これらは中国の西周時代や春秋時代前期のものとは製作法が異なっており、むしろ戦国時代の銜と共通している。すなわちシベリア、中央アジアにおいては、通常、中国の早い時期の銜とは製作法が異なることを知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国における調査例はまだ十分ではないが、中国のくつわの発達の概要を論文にまとめることができたのは大きな収穫である。その概要をロシアにおける調査の結果と照らし合わせることにより、問題点が幾つか浮かび上がってきた。問題点がはっきりしてきたことは、この研究にとって最も重要なことであり、研究はかなり順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
中国の馬具についてさらに調査を進め、中国の初期のくつわの発達過程を確実に把握する。特に西周後期と春秋前期の馬具をさらに調査し、詳細な変化を跡付け、年代を明らかにする。また中央アジアの青銅器時代および初期遊牧民文化の初めの時期の馬具をさらに調査し、その成立過程を検討する。そしてそれらの地域と中国との、馬具における交流の実態を明らかにする。くつわだけでなく、辻金具などの小型金具も研究対象にしたい。中国において1、2か所、中央アジアにおいても数か所の調査が必要である。
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