研究課題/領域番号 |
24520856
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
篠原 和大 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30262067)
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キーワード | 登呂遺跡 / 登呂モデル / 初期農耕 / 農耕関連資料 / 復元水田 / 復元実験 / 実験考古学 / 比較考古学 |
研究概要 |
静岡清水平野における初期農耕形成モデル(「登呂モデル」)を「農耕社会の生産システム」および「農耕形成のプロセス」という視点からさらに具体化、立体化する目的で、昨年度からの継続内容も含みつつ以下の研究を行った。 1.継続して登呂遺跡復元水田を利用したイネの栽培実験を行った。特に、収穫や計量の方法を改善し、収穫量の計量等は効率的に行うことができるようになった。 2.道具の製作と使用実験については、農具類の内鍬類の既出土資料データを整理して復元対象資料を選定し、図上復元にもとづいて復元品の製作実験を行った。一定種類の又鍬等については一定量の完成品を得たため、26年度の後期実験等が可能となった。 3.静岡市鷹ノ道遺跡の調査に立ち会い、水田遺構に関する諸知見を得ることができたほか、畠と考えられる遺構についても新知見を得た。この畠と考えられる遺構については、関連事例との比較を行い論考を発表した。 4.農耕形成関連の史跡公園、博物館等の視察として、平塚川添遺跡公園等九州方面の資料調査を実施したほか、静岡県内や長野方面の資料を実見検討することができた。また、研究の基礎資料となる関係図書、報告書等を購入・収集し検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は本務施設が全面改修となり、実験室や収蔵庫を含めた移転と復帰が行われ、これらの作業にかなりの労力を費やすこととなった。このため本研究課題については、可能な限りエフォートを配分するようにして、当初の計画程度の研究を行うことはできたが、昨年度の遅れ(やや遅れている)を取り戻すには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
静岡清水平野における初期農耕形成モデル(「登呂モデル」)を「農耕社会の生産システム」および「農耕形成のプロセス」という視点からさらに具体化、立体化する研究の総括を目指す。 (1)これまでの道具使用・栽培実験の検討結果をもとに、登呂遺跡復元水田での道具使用・栽培実験を実施する。農耕具・工具の復元は、年度当初に一定の道具類の組み合わせの完成を目指す。登呂遺跡復元水田を利用したイネの栽培実験でも一定レベルの復元環境、プロセスでの実施を目指す。また、これまでの実験結果とデータを整理して資料化する。 (2)これまでの検討から、農耕導入段階の「丸子モデル」、弥生中期の「有東モデル」、弥生後期の「登呂モデル」について、生産システムの点から諸課題を検討し、一定のモデルとして完成を目指す。また、これらのモデルを前提とした静岡清水平野の農耕の形成プロセスの可視化について成案をはかる。 (3)引き続き国内の農耕形成関連の史跡公園、博物館等へ出張して視察し、比較検討会をおこなう。26年度は東北方面を対象とする。引き続き研究の資料となる関係図書、調査報告書等を購入する。 (4)平成26年度後半は、成果のとりまとめに力を注ぎ、年度末までに研究によって得られたすべての成果をとりまとめ、成果報告書を刊行する。研究期間終了後は、重要と考えられる成果を論文にまとめ、学会誌等に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ、交付額に合わせて使用したが、小額の残額が生じ、それに見合う支出項目が無かったため。 小額であり、物品費等の一部として使用する。
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