研究課題/領域番号 |
24520857
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋本 裕子 京都大学, 霊長類研究所, 教務補佐員 (90416412)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 骨考古学 |
研究概要 |
縄文時代後期から晩期の出土人骨のうち、沿岸部に位置する遺跡出土の資料の通婚圏について研究を進めた。三河湾沿岸の縄文時代遺跡群は、土器や副葬品の分析から婚姻後の居住が選択居住であることが指摘されてきた。当地域では、歯の計測および非計測的特徴の分析から、男女ともに非常に限られた狭いエリアでの婚姻が行われた可能性とともに、女性に比べると端正の方がより分散域が大きいことが示された。特に三河湾沿岸地域では歯の分析から得られる差異が殆どなく、遺伝的に近い可能性が示された。そこで、三河湾沿岸部の縄文時代遺跡群では、限られたエリア内での婚姻が繰り返されることにより男女とも、他地域に比べると集約された様に一つの集団となることが確認できた。また、女性に比べると男性の方がやや分散が認められたことから、地域内での婚姻が繰り返されるが、男性の方が移動する範囲がわずかではあるが広い可能性が指摘で来た。 同時に縄文時代以降の弥生時代・古墳時代の人骨、韓国地域の同時代人骨などとも比較分析を行い、三河湾沿岸地域の通婚におけるエリアが限られた範囲内であることがより明確に示すことが出来た。 以上の分析結果は、東南アジア考古学会、ヨーロッパ人類学会、イギリスの骨考古学会でそれぞれ成果報告を行った。特にイギリスでの研究発表は島国という類似環境ということもあり、活発な意見交換が出来た。特に歯の研究を行うロンドン大学のSimon Hillson博士、土器の地域性の研究を行うセインズベリー研究所のSimon Kaner博士とは今後も頻繁に意見交換を行う事で相互協力の関係を築くことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データを取った資料に関しては順調に成果を発表している。また沿岸部地域の資料に関しては研究の目的を達成したと判断できる。ただし初年度は予定していたよりも多く国際学会への発表や依頼された講演などが重なり、山間部地域の遺跡群のデータの解析が予定したよりもやや遅れた印象である。 そこで初年度の達成度を「おおむね順調に新ている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
山間部地域のデータ収集と関東地域で人骨の出土が多く報告されているため、当地域を中心にデータの収集・解析を行う。 京都大学が解剖学用の交換標本として、オーストリアのウィーン大学へ寄贈した縄文時代人骨の標本が未報告であることが確認されており、その資料の収集とデータの分析を予定している。特に本資料に関しては性別や推定年齢といった基礎的な報告が一切されていない。そのため、出来うる限りのデータ収集を行い、データおよび撮影した写真などを学術誌に投稿し、基礎データの公開に努める。これは未報告資料であるために日本の文化財資料を研究者だけでなく多くの人へ報告する意味もある作業と考えている。 初年度は通婚圏のエリアを特定することに重きを置いたが、次年度以降は初年度の研究方針を続けつつ、遺跡毎のライフ・システムに関する特徴点も抽出して行く予定である。特に縄文時代人骨には大腿骨に脚力を多く利用した痕跡となる筋付着部が特徴として現れる(大腿骨背側:ピラスター)ことが指摘されている。これらの差が沿岸部と山間部に違いが見られるのかといった差異についても観察をする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は購入を予定していたコンピュータの機種変更があり、統計ソフトとの互換性の有無がソフト開発者から未確認との報告であった。そのため、予定していたノート型のコンピュータの予算分を次年度に繰り越すことになった。ソフト開発者からの結果が届き次第、繰越予算分でコンピュータの購入をする。 他は当初の予定通りである。
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