研究課題/領域番号 |
24520861
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
三宅 俊彦 専修大学, 文学部, 兼任講師 (90424324)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 考古学 / 貨幣 / 東南アジア / 中世・近世 |
研究概要 |
本年度は、東南アジアにおける銭貨流通の実態を考古学的に解明するという、当該研究の目的達成のため、インドネシアのジャワ島東部より発見された一括出土銭の調査を行った。調査はインドネシア考古学センターと共同で行い、調査した資料はジャワ島南東部のプジョン地域から発見され、東部ジャワ文化財管理事務所が管理している2点の一括出土銭である。調査は考古学の基礎的な資料化の作業であり、銭種の同定と枚数の集計、写真撮影、拓本などである。また出土地点の地理的・文化的情報を入手するため、プジョン地区にて現地調査も行った。 その結果、東部ジャワの中世の銭貨流通の状況を復元するための、具体的な情報を得ることができた。調査した一括出土銭はすべて中国の銅銭であった。それぞれ最新銭が南宋・咸淳元寳(13世紀末)と明・永楽通寳(15世紀初め)であり、中世の時期に中国からもたらされたものと推測される。それらの銭種組成は、中国・日本・ベトナムなどで発見されている一括出土銭と非常に類似することが明らかとなった。このことから、中世に日本やベトナムへ中国銭が流出したのと同じ時期に、ジャワ島へも同じ銭種組成の中国銭がもたらされたものと考えられる。 その状況は、14,15世紀のジャワでは銅銭が使用されているとの文献の記載とも一致しており、それを裏付けるものと言える。また南宋末の銭貨を最新銭とする資料が存在することから、流入の契機にはモンゴルのジャワへの侵攻と、その後に活性化する貿易活動などが重要な役割を果たしたと推測される。 この調査成果は、読売新聞2013年3月27日(水)朝刊文化欄で報道され、社会への調査成果の還元も行われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在のところ、研究の達成度はほぼ予定通りであり、部分的に計画を上回る成果を上げていると評価できる。 申請時の調査予定ではバリ島の一括出土銭の調査を行う予定であったが、昨年度まで採択されていた科研費(基盤研究(C)課題番号21520774)により、当初の目的をほぼ達成する成果をあげることができたため、継続して調査を行う必要がなくなった。これを受け、今年度の調査では新たにジャワ島において行うこととし、インドネシア考古学センターと協議した結果、東部ジャワ文化財管理事務所が管理している一括出土銭を調査することになった。 調査は滞りなく進み、調査成果も上記概要で記した通り、新たなデータの蓄積が行われ、着実に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの調査成果を踏まえ、東南アジアの銭貨流通の状況を解明すべく、さらに詳細なデータを収集する調査を行う予定である。 次年度である平成25年度は、ベトナムにて調査を計画している。調査対象は、ハノイ国家大学のグエン・ヴァン・キム副学長と協議して決定するが、ベトナム中部の一括出土銭資料が調査できれば理想的である。しかし、出土資料の入手は予定通りに進まない場合も多く、それが難しい場合はベトナム北部の一括出土銭の調査を行うこととする。ベトナム北部の資料はこれまでの科研費による調査ですでに資料化を進めている。まだ若干未調査の資料が残っているため、それらの調査を進めたい。 最終年度の平成26年度は、これまでの調査成果をまとめ、問題点の共有を図るために、小規模の国際シンポジウムを開催したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の調査では調査器材などの消耗品を、これまで購入したものをそのまま使用したため、若干の余裕を持って調査を行うことができた。次年度には新たな器材の購入、研究のための資料収集などで、費用が増加する予定である。また海外での調査は為替の変動により、これまでより経費がかかることが予想され、調査費用の予算を余裕を持って計画することとする。
|