本年度は研究成果の共有を図るため研究会を開催し、また今後の研究継続の可能性を確認するため、ラオスにて調査を行った。 研究会は2014年12月に淑徳大学東京キャンパスにて行った。連携研究者・研究協力者および海外の研究者を招聘し、これまでの調査研究の成果を報告し、今後の研究展望を示した。報告は中国南部・台湾・ベトナム・ラオス・インドネシアなど、広範な地域の出土銭の状況が報告され、それらの地域で使用された銭貨の具体的状況が、考古資料から明らかとなった。その結果、中世・近世の東南アジアにおいて、中国の銭貨だけでなく日本やベトナムなど様々な国・地域で作られた銭貨が、広範囲に流通していることが確認でき、その歴史的背景も東アジアに共通するものと地域独自の様相とが相互に影響していることが示された。これら本研究課題の成果を内外の研究者と共有することができ、また各地域の今後の研究課題も具体的に明らかとなったことで、今後も研究を継続する必要性とその方向性も共有できた。 昨年度の予備的な調査を経て、2015年2月にラオスにおいて出土銭の調査を実施した。ラオス北東部シェンクワン県のプー・タット寺院にて発見された銭貨を調査し、資料化を行った。その結果、ベトナムの銭貨と雲南で作られた中国銭が主体となっていることが分かった。前科研の研究成果であるベトナムの一括出土銭との比較から、これらの銭貨の種類がベトナム北部の状況と類似していることが明らかとなり、歴史的背景と合わせ、当該資料は隣接するベトナムよりもたらされたと推測される。合わせてシェンクワン県での聞き取り調査を行い、多くの一括出土銭の情報を得た。今後も調査を継続することで、より詳細な様相が明らかになると期待できる。 これらの研究成果は、香港中文大学にて「東亜出土銭幣的考古研究」と題する研究発表を中国語にて行い、中国の研究者に対しても周知を図っている。
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