研究課題/領域番号 |
24520866
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松島 英子 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90157305)
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キーワード | イラン国立博物館テヘラン館 / 楔形文字資料 / エラム語王碑文ブリック / イラン古代の歴史文化 / 国際シンポジウム(2014)計画 / マルヤン出土文書 |
研究概要 |
本研究は、研究代表者が分担者として参加している基盤研究A「イラン国立博物館所蔵楔形文字資料の研究」と提携している。研究チームは過去イラン国立博物館(テヘラン)に度々赴き、資料の写真撮影および3Dスキャニングによって膨大なデータを収集してきた。成果の一部を既に2012年秋に研究報告書Brick Inscriptions in the National Museum of Iran, A Catalogue(単行本)として発表し、私は主著者の一人としてエラム語王碑文ブリックを担当した。残った未公刊資料の研究続行が本年度の主要な活動である。そのため例年同様夏期にテヘランへ出張し、画像では不鮮明な部分を目視で確認する予定であった。しかし2013年6月のイラン大統領選挙後の変動で先方に人事異動があった影響を受け、我々のビザ申請への博物館の事務対応が送れ出発予定日に間に合わず、調査はキャンセルとなった。この間、我々は手持ち資料を用い研究を続け、成果確認のため研究打ち合わせを随時行った。イラン国立博物館との調整を続けた結果、12月末にテヘラン訪問が実現した。その際すでに我々が始めたマルヤン出土文書の研究状況を説明した。 一方、日本チームの研究成果を発信し、海外の研究者と成果交換を行う国際シンポジウム計画がかねてからあったが、その具体化が始まった。シンポジウムのテーマ決定、期日決定、海外から招聘する研究者の人選等について検討し大筋を決定した。シンポジウムのテーマはAncient Iran:New Perspectives from Archaeology and Cuneiform Studiesとなり、2014年12月6-7日に京都大学で開催することを決まった。海外でこのテーマに関し優れた実績をあげている研究者4人に発表参加を打診したところ、全員から快諾を得た。日本側からも研究班構成員に加え若干の研究者に発表内諾を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、研究チームはこれまでに度々イラン国立博物館(テヘラン)に赴いて、写真撮影と3Dスキャニングにより膨大な量の研究データを収集している。その成果は、英語による単行本の形で発表され、私はエラム語王碑文ブリック200点以上を公表した。しかし未公刊の資料はまだ多数残されている。それらを解読・研究する作業は、研究チームの仲間と協力して進めている。地味な作業であるが、成果は上がりつつある。いずれ近いうちに、国内外に刊行物の形で発表したいと考えている。ただし書物刊行のための財政的裏付けについては、様々検討しているもののまだ確実な見通しは立っていない。 また同じく「研究実績の概要」で述べたように、成果報告のための国際シンポジウムの実施計画は着々と進行している。海外からの招聘者から期待を込めた快諾を得ていることをみても、内外の大きな注目を集める国際研究集会を開催できると思われる。これについても、近い将来成果発表を論文集として刊行することが必須であろうが、書物発行の財政的裏付けにはまだ具体的見通しはない。 以上を総合すると、結論的に「おおむね順調に進行している」ということになろう。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、今後の研究の柱は二本となろう。 1.イラン国立博物館(テヘラン)の所蔵資料のうち、われわれが研究・刊行を担当する取り決めになっている資料の解読・研究(細かい注釈と資料の歴史・文化的位置づけ)を行ったうえで、近い将来書物にまとめ研究成果の国内外への発表を行う。 2.2014年12月に京都で開催予定の国際シンポジウムを成功させる。 1については、2014年度は毎月一度程度の研究打ち合わせの機会を設け、ミニ研究会の形で成果を検討し合い、少しずつだが確実に成果をまとめ上げていく予定である。イランに赴いて、若干の扱いが難しい資料を目視で再確認するする作業は必要であるが、どの時点で何人が行うかは、研究の進捗状況と、相手との時間調整により決める。2については、先にも述べたがすでに2013年度中に具体的な準備が進んでおり、サーキュラーの送付も始めた。今後は6月末までにシンポジウムで発表予定の各自題目を送ってもらい、9月に発表レジメを送ってもらう取り決めになっているので、それらを踏まえ具体的なプログラム作り、細々した実務の取り組み、海外からの招聘者との様々な交信を着実に重ねて行くことになろう。なお、このシンポジウムの成果発表論集をどのような形で刊行するか、とりわけ財政的裏付けの目途をどのようにつけていくか、情報を集めながら解決の道を探ることも今後の課題である。
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