研究課題/領域番号 |
24520867
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
池谷 信之 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80596106)
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キーワード | 蛍光X線分析法 / フォッサマグナ西縁 / 判別図 |
研究概要 |
先史土器の「フォッサマグナ西縁」をはさんだ越境的移動を、蛍光X線分析法によって判別するためのデータベースの構築が、本研究の第1の目的である。それにもとづいて土器の「搬入」「模倣」「地方型式化」という受容過程を分析し、土器移動の動態的モデルの構築を展望することが第2の目的である。 本研究の開始時点で67か所、約1500点の基準資料を分析済みであり、平成24年度は愛知県~三重県内および千葉県の古窯址出土土器約300点を分析し、平成25年度は京都府と東京都、茨城県内の古窯址出土土器約500点を分析し、データベース構築に必要な資料の90%程度の分析を終了した。 その結果、当初の予測どおりFe/Si・Ca/K・Zrの3つの指標を用いた2つの判別図によって、出土土器をフォッサマグナ西縁(糸魚川・静岡構造線)の東西に区分することが可能となった。ただし、対象資料の増加に伴い、判別図上での部分的な重複部分が存在することも再確認され、ここにプロットされた資料をどう判別するかという課題も浮上した。 これまで資料の前処理(風化面の削りだしと研磨)を板状の砥石を用いて手作業で行っていたが、平成25年度は電動グラインダーと砥石を併用することで、効率化を図った。 またこの結果の検証と応用について、斎藤努国立歴史民俗博物館教授(文化財化学)の指導を受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の応用研究の基礎となる判別図が予定どおり完成した。またその基礎となる古窯址出土の資料については、京都府や茨城県などの研究者から大量の資料の提供を受けたため、現地への資料収集のための出張の必要がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は完成した判別図をもとに、遺跡出土資料の分析を本格的に開始する。 第1の対象として、昨年度までに資料借用しながら、実施できなかった長野県棚畑遺跡の縄文中期土器と山梨県釈迦堂遺跡の縄文中期土器を分析する。棚畑遺跡はフォッサマグナ西縁の西側に位置し、在地産であればその西側にプロットされると予想される。資料は中期前葉から中期末まで段階別に抽出してあり、時期ごとに産地の変遷を把握する。棚畑集落は中期末に崩壊するが、その段階に他地域の土器が流入してくるかどうかが、焦点となる。釈迦堂遺跡はフォッサマグナ西縁の東側に位置しており、在地産であればその東側にプロットされる。予備的な分析によって、集落の崩壊する中期末段階にフォッサマグナ西縁の境界付近となる八ヶ岳西南麓から土器が流入することが予想されており、その動きを再確認する。 第2の対象として、三浦半島の弥生時代中期~後期土器を分析する。三浦半島には外洋的海人集団が形成した洞穴遺跡が幾つか存在するが、ここから伊豆半島南部に生息するオオツタノハ貝を採取するための遠征が行われたという仮説が提示されている。三浦半島出土の弥生時代中期~後期土器と三宅島出土の弥生土器を分析し、その仮説を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
京都府・埼玉県・茨城県在住の研究者から基準資料となる古窯跡出土土器の提供を受け、これらを郵送していただいたため、予定していた資料収集のための出張を行わずに済んだ。 ①設備備品費の支出の予定はない。②消耗品費としては、蛍光X線分析装置を冷却するための液体チッソ(1回10リットルで4500円×30回)135千円が主な品目であり、その他として分析関係消耗品、資料保管用消耗品、パソコン関係の消耗品などの支出の予定があり、合計で410千円を見込んでいる。③国内旅費として、神奈川県三浦半島・長野県・山梨県への分析資料収集出張費と、研究成果発表出張費を支出する予定で、合計で180千円の支出を見込んでいる。④人件費・謝金として、縄文土器の実測および拓本作成のため、1名×10日×2000円=200千円の支出を予定している。⑤その他、蛍光X線分析の結果を補強するために、土器の鉱物分析等を委託業務によって行う。これに345千円を支出する予定である。
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