研究課題
先史土器の「フォッサマグナ西縁」を挟んだ越境的移動を、蛍光X線分析によって判別するためのデータベースの構築が、本研究の第1の目的である。そのうえで事例研究を行い、地方型式生成のモデル構築を展望することが、第2の研究目的である。研究期間の前半においては、データベースを構築することに重点をおいた。研究の開始時点では、「準原産地試料」約1500点が、Fe/Si、Ca/K・Zrの3つの指標を用いることで、フォッサマグナ西縁を挟んだ東西に区分されることを明らかにしていた。これに比較的資料が少なかった京都府・三重県、東京都、千葉県の資料を追加し、合計2000点以上の資料が、整合的に区分されることを確認した。研究期間の後半では、完成したフォッサマグナ東西の判別図に基づいて、幾つかの事例研究を行った。列島にアカホヤ火山灰が降下した直後の、縄文時代前期初頭土器(木島式→清水之上Ⅱ式)を分析した結果、木島式土器はフォッサマグナ西縁を越えて東海地方西部から東部に搬入されたのに対して、後続する清水ノ上Ⅱ式段階では、東西で異なる粘土が用いられ、土器型式上の地域差が出現することが明らかとなった。同様に東海西部から東部に分布圏を拡大した縄文早期末の入海式土器を分析したが、地方差をもつ東海東部出土土器は在地の粘土が用いられ、地方差が認められないものは東海西部から搬入されていることが明らかとなった。このように、地域性の出現と在地粘土の採用には密接な関係が存在する見通しが得られ、土器型式の波及と地域型式の生成には一定の法則性が存在する可能性が示された。また東海東部の縄文時代中期後半において共存する加曽利E式土器と曽利式土器を分析した結果、化学的にも鉱物学的にも両者を区分することが困難であった。集落内で異なる土器型式が作り分けられている可能性があり、土器製作の複層的な一面も明らかになった。
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東海縄文研究
巻: 2 ページ: 印刷中
Special Issue of Quaternary International Human Behavioral Variability in Prehistoric Eurasia: Views from the Lithic and Raw Material Perspectives
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