研究課題/領域番号 |
24520868
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中沢 道彦 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40626032)
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研究分担者 |
阿部 芳郎 明治大学, 文学部, 教授 (10221730)
中村 豊 徳島大学, その他の研究科, 准教授 (30291496)
中村 大介 埼玉大学, 教養学部, 准教授 (40403480)
遠部 慎 北海道大学, その他部局等, その他 (50450151)
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キーワード | レプリカ法 / 環日本海 / 農耕 / 生業 / 土器編年 / 土器圧痕 / 縄文時代晩期 / 栽培 |
研究概要 |
前年度に引き続き、東アジアを環日本海という視点で日本列島を中心に農耕文化の生業複合及び社会の変化を分析するための基礎データの集成調査とその評価を試みた。そして、生業データと考古学資料の相関性の検証を試みた。成果は代表者が単著にまとめた他、各研究者により学術論文や学会発表などを行った。 1 単著・論文等の発行・発表 単著『先史時代の初期農耕を考えるーレプリカ法の実践からー』を刊行した他、研究論文等を発表した。 2 研究発表 2013年8月の第27回雑穀研究会(長野県飯田市)で中村豊・中沢道彦、『日韓における食物栽培の開始と農業技術』(山梨県)で浜田竜彦・中沢、第41回山陰考古学研究集会(鳥取県鳥取市)で中沢、浜田竜彦、中村豊が、12月の『第30回日本植生史学会』で中村豊・中沢、『縄文/弥生の画期』(山形県山形市)で中沢、2014年2月の「第9回九州古代種子研究会」で中沢が発表した。 3 調査 (1)レプリカ法による種実圧痕九州、山陰、山陽、四国、近畿、北陸、東海、東海、新潟の遺跡の調査を行った。(2)種実調査 四国、中部高地の調査を行った。(3)同位体分析 日韓資料の安定同位体分を行った。(4)骨角器調査 九州、瀬戸内、四国、近畿の骨角器調査を行った。(5)土器編年を軸に中部高地、東海、新潟を対象にレプリカ法データと石器組成の相関性を検討した。(6)研究会 御社宮司遺跡研究会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) レプリカ法調査では平成25年度調査予定の山陽の岡山県窪木遺跡、近畿の大阪府馬場川遺跡、滋賀県金屋遺跡の調査を実施できなかったが、山陽の岡山県彦崎貝や近畿の和歌山県立野遺跡、堅田遺跡や平成26年度実施予定の山陰の鳥取県諏訪南山崎遺跡、香川県林・坊城遺跡、新潟県和泉A遺跡の調査を実施した。レプリカ法調査では近畿でも和歌山県や新潟県上越地方において縄文時代晩期末のアワ・キビの雑穀圧痕を初めて検出した。レプリカ法の韓国遺跡調査はできなかったが、韓国新石器時代遺跡出土の土器付着炭化球根類の年代測定及び安定同位体分析を行った。また、レプリカ法による土器の種実圧痕を行う過程で、島根県三田谷遺跡では土器の施文具として、石川県御経塚遺跡では偶然の混入だが、微小巻貝を検出した。更に長野県の縄文時代晩期末土器では初めて今日的にイネの害虫のコクゾウムシを検出した。レプリカ法分析の新たな有効性を確認できた。また日本海沿岸遺跡出土土器のレプリカ法による種実圧痕データ、土器編年研究成果及び異系統土器の交流経路の分析から日本列島における初期農耕の伝播において日本海経路の重要性を検証した。その成果は中沢の著作及び第41回山陰考古学研究集会で発表した。更に富山県小竹貝塚出土の1個体土器から多数の圧痕がある事例の調査を通じて、土器の種実圧痕の分析を土器製作の中で試みる新たな方向性を示すことができた。 計画通り、平成25年8月にシンポジウム形式の研究会を開催した。長野県御社宮司遺跡の構造の検討を行い、狩猟に傾斜する遺跡集団が縄文時代晩期後葉~弥生時代前期の数世紀の時間幅で初期農耕を受け入れ、生業の緩やかに変化を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成26年度は平成24~25年度の研究成果を踏まえ、レプリカ法の補足調査を新潟を4月~6月、九州島嶼部を7~8月、四国を4月~8月、山陰を4月~8月、近畿を8~9月、東海を7月に補足的に調査を行う。また、韓国に加え、8月に中国の調査を行う。そして、走査型電子顕微鏡による観察、同定を9月~12月に行う。 農耕文化成立期に関わるモデル構築遺跡の一つとして分析を進めてきた徳島県三谷遺跡についてはその成果は7月開催の25回中四国縄文研究会で中沢、中村豊、川添和暁、浜田竜彦により発表が行われる予定で、研究会の主要テーマの一つとなる。さらにこれまでの研究成果をまとめた「三谷遺跡(自然遺物編)報告書」の編集を行う。また、モデル構築遺跡の一つである御社宮司遺跡についての研究の成果を公開研究会で公表する。加えて、平成24年度に実施したシンポジウム「レプリカ法の開発は何を明らかにしたのか」で明らかにされた課題を踏まえ、「レプリカ法の開発はなにを明らかにしたのか2016」を開催し、①前回充分に議論できなかった九州、関東、北陸、新潟のレプリカ法分析成果からアワ、キビ栽培導入の時期の検証②前述の三谷遺跡、御社宮司遺跡などの初期農耕導入モデル遺跡等によるモデル提示③レプリカ法により明らかにされた農耕受容器と遺構、遺物の変化の相関性の検証成果を明確化する。 また、一般市民への研究成果公表として、尖石縄文セミナー(長野県)、日本海学講座(富山県)、津南学講座(新潟県)で講演を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
韓国遺跡調査について当初現地調査を行う予定でいたが、韓国新石器時代出土土器付着炭化物の年代測定及び安定同位体分析を優先し、海外調査を行わなかったため、出張旅費相当額に未使用が生じた。 8月に韓国及び中国の先史時代・青銅器時代遺跡出土土器のレプリカ法調査を実施する予定である。
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