本研究は、早稲田大学が調査を継続しているアブ・シール南丘陵遺跡の出土資料を検証し、古代エジプトにおける聖地の形成と展開について実証的に明らかにすることを目的とした。本研究により、当該遺跡における通時的な発展より具体的に明らかとなった。特に岩窟遺構等から出土した中王国時代におけるライオン女神の祭祀の痕跡については、出土遺物の再検討と文字史料の精査を行い、後世に記録のある古代エジプトの「酩酊の祝祭」との関係が推察された。また、岩窟遺構では神像群の疑似埋葬が行われたことを指摘した。第2中間期末における集団埋葬の性格、丘陵頂部の新王国時代の遺構の性格についてもより具体的な成果を挙げることができた。
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