連携研究者:①廣川守(30565586、泉屋博古館・学芸課・学芸員)、②菊地大樹(00612433、日本学術振興会特別研究員PD・京都大学人文科学研究所)。研究協力者:羅豊(中国・寧夏文物考古研究所・所長)、王志浩(中国・鄂爾多斯(オルドス)青銅器博物館・館長)。 今年度行った活動の中で最も重要なものは中国寧夏回族自治区固原博物館での資料調査である。固原地区の重要遺跡である、於家荘墓地・楊郎墓地の出土品を中心に95点について、表面観察と写真撮影および蛍光X線分析を行い、帯留金具を中心に36点の実測を行った。とくに帯留金具は、この調査で構造が明らかになったものが多くある。また断面や裏面の観察によって、鋳造技術の復元につながる特徴的な様態を観察した。このほか、すでに公表されているデータの収集整理をすすめ、帯金具データベースを拡充した。 前年度までの成果を含めて本研究全体において、既報告データの収集から北方青銅器文化の帯金具の全体像を把握し、現地調査によって個別資料の詳細データを獲得した。これらから得た成果は次の5点にまとめることができよう。①帯金具の構成および使用法について新たな見解を得た。②資料観察から、製作技術・加工技術について新知見を得た。③蛍光X線分析に基づく金属素材の検討から、合金に関する新知見と北方青銅器文化の素材獲得に関する予察を得た。④動物意匠の分析から、北方青銅器文化と中原側との文化的交流を考察した。⑤以上を総合して、中国北方では匈奴帝国が成長し中原側では戦国から秦・漢へと激しく動く時代背景の中で展開した帯金具の意義を考察した。 これらの成果は、学会発表等6回、論文等6件などによって順次公表してきたが、最終の本年度には、調査資料集成を含めて124頁に及ぶ成果報告書を作成・発行した。
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